2002/12/06

[RLC021206]ルビュ言語文化 第42号

[2002-12-06] Revue Langue et Culture N.042
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[ 週刊 ] ル ビ ュ 言 語 文 化 (RLC) ── 第42号 ──

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■ 42号 もくじ ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
◇研究室より:日本言語政策学会,仲矢信介さんの発表から
◇私から一言:「教」と「学び」 山本冴里
◇おしらせ:国際シンポジウム「初等教育段階における日本語教育」,ほか
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■ 研究室より ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
日本言語政策学会,仲矢信介さんの発表から
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 12月1日(日)に桜美林大学町田キャンパスで開催された「日本言語政
策学会第1回大会」の中で,仲矢信介さんの「日本語をめぐる言語政策のモ
ダニズムとポストモダニズム」の発表は面白かった。
(参考:日本言語政策学会 http://www.obirin.ac.jp/~jalp/)

仲矢さんは,ネウストプニーの「言語管理理論」がもつ植民地主義的性格を
指摘しつつ,教師が学習者のアウトプット(表現)に注目するとき,さまざ
まな価値意識が働くことを述べ,このとき,自分自身の「規範」意識に照ら
して行動していることを指摘する。
そして,この「規範」を,「伝達規範」と「エスニック規範」の二種に分類
し,教師態度としては「伝達規範」に触れるものは訂正するが,「エスニッ
ク規範」に属するものは「訂正」するべきではない,という提案が示された。

「伝達規範」とは,いわば「通じるか,通じないか」である。「通じ」なけ
れば聞き返すしかないから,「訂正」は起こらない。

「エスニック規範」は「通じ」てはいるが,「何かおかしい」という教師側
の価値意識の表れであるが,ここで「何かおかしい」としてSTOPをかけ
たとき,対話は中断する。
しかしここで一呼吸おけば,伝達者としての学習者の「言いたいこと」に近
づける。

問題は,「通じる」と対話者が判断するとき,さらに相手の内容にどのよう
に踏み込み,インターアクションの質をどのように高めていけるかだろう。

内容が空疎であればどんな“きれいな”会話をしてもたのしくなれない。
                               (ほ)
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■ 私から一言 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
「教」と「学び」                      山本冴里
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 「教育」は好きじゃない。
 「教」という字が煙ったい。中国語では「教」という字は,使役の意味も
持っている。「学習者ヲシテ日本語ヲ習得セシム」ことに全力疾走するのが
日本語教師の役割だとしたら,私は御免被りたい。

 授業中に1分間で何ができるか事前にストップウォッチを持って計る。そ
れが教師として一番はじめにやることだ,と言った人がいた。経験を積むに
つれて,どのように計画を立てればミニマムの時間でマキシマムを注入する
ことができるのか,わかるようになるという。
 聞きながら,教室は哀しい工場になってしまうと思った。

 べるとこんべやート,イッショダヨ,ソンナノ。

 嫌だ。私はロボットじゃないし,学習者だって,製品じゃない。教室も,
生きて感じて動いている人間たちが出会う場所−−そして学ぶ場所だ。

 学ぶとは,時として愉悦さえともなう主動的な行為。
 思うに学ぶことは「関係づくり」と言いかえることができる。
 日本語教育の場合,学習者は「日本語」や「日本語使用者」や「他の学習
者」と出会い,関係をつくる。日本語を使いながらその関係を練り,変化さ
せていくことが学びである。その過程において育つ。出会った他者の助けを
借りて,学習者は自分自身を育てる。

 「教」と「学び」−−いつか担当する日本語教室を,工場にはしたくない。
学びあう共同体を目指したい。教師という役割はあっても,私も「学ぶ」一
員になっていたい。          (日本語教育研究科 修士1年)
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■ 投稿お願い ■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
このメルマガの読者の方々から広くご意見を募集しています。日本語教育に
かかわることなら何でも結構。ご意見・ご感想は,掲示板までお願いします。
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	hosokawa@waseda.jp
までメールで原稿をお送りください。
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■ おしらせ ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
━【国際シンポジウム】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆日本語国際センター国際シンポジウム「初等教育段階における日本語教育」
◆http://www.jpf.go.jp/j/urawa/world/wld_04.html
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 近年,海外における日本語教育の比重は,従来の高等教育から初等・中等
教育機関へ大きく移行してきています。初等と中等との比較でいえば,現在
は中等教育における取組みが顕著ではありますが,多くの国々で国際理解の
促進や国際競争力の基礎づくりとして外国語教育の低年齢化を図る動きもあ
って,日本語教育についても徐々にそれが進むことが予測されています。こ
うした状況を踏まえ,現在初等教育において日本語教育が行われている各国
の現状と課題を適確に把握することは,これからの日本語教育を考えていく
上でなくてはならないものと言えるでしょう。今回のシンポジウムでは,5
ヶ国の事情報告を得た上で,初等教育段階における日本語教育の意義につい
て議論し,また将来の展望について探っていきます。どうぞご期待ください。
◇日時:1月15日(水)14:00−17:30
◇場所:国際交流基金日本語国際センター2階ホール
    (埼玉県さいたま市北浦和5−6−36)
◇最寄駅:JR京浜東北線「北浦和駅」西口
◇パネリスト:曽麗雲(中国遼寧教育学院研訓部日本語教研員)Sフィリッ
    プス(豪クインズランド州立クレッセント・ラグーン校教諭)Mダ
    イアー(カリフォルニア州立クラレンドン小学校教諭)Jゲルゲイ
    (ハンガリー/国立ヴィラノシ小中学校教諭)林紀子(西町インター
    ナショナルスクール教諭)
◇モデュレータ:川上郁雄(早稲田大学日本語研究教育センター教授)
◇内容:第1部 発表「各国の初等教育段階における日本語教育」150分
    第2部 パネル「なぜ初等教育で日本語を教えるのか」45分
    第3部 ラウンドアップ「展望と課題〜今後に向けて〜」30分
◇使用言語:日本語
◇申込み方法(入場料無料):参加ご希望の方は,「シンポジウム参加希望」
    と明記の上,1.氏名,2.連絡先住所,3.電話番号,4.職業
    をご記入になり,郵便,ファックスまたはE−mailで,12月20
    日までに下記へお申し込みください。(希望者多数によりご参加い
    ただけない場合のみ,ご連絡いたします。)

    〒336-0002 埼玉県さいたま市北浦和5-6-36
    国際交流基金日本語国際センター情報交流課シンポジウム係
    ファックス:048-830-1588 E-mail:jfnckt@jpf.go.jp


━【締め切りました】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆朝日カルチャーセンター「日本語教師養成講座」講演会
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◇満員御礼。締め切りました。


━【現在の掲示板パスワード】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
	ユーザー名:	user
	パスワード:	x123x
(すべて半角英数字です。)
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 誌 名:ルビュ「言語文化」42号
 発行日:2002年12月6日(毎週金曜日発行)
 発行所:言語文化教育研究室
     〒169-8050 新宿区西早稲田1-7-14
     早稲田大学大学院日本語教育研究科内
 編集,発行責任者:細川英雄
     http://faculty.web.waseda.ac.jp/hosokawa/
 配信システム:まぐまぐ
     http://http://www.mag2.com/
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 登録,解除の手続きは,
     http://faculty.web.waseda.ac.jp/hosokawa/mmaga.htm
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