2002/10/04
[RLC021004]ルビュ言語文化 第33号
[2002-10-04] Revue Langue et Culture N.033 #################################################################### [ 週刊 ] ル ビ ュ 言 語 文 化 (RLC) ── 第33号 ── #################################################################### ■ 33号 もくじ ■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◇研究室より:日本語教育の専門性とは何か ◇Web Site更新:授業評価アンケート公開 ◇私から一言:「支援について思ったこと」矢本美和 ◇おしらせ:国際交流基金シンポ「日本語と日本研究」ほか -------------------------------------------------------------------- ■ 研究室より ■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 日本語教育の専門性とは何か。 日本語教育の専門性について考えることを今期の課題としたが,よく考え てみると,この問題は今までほとんどまじめに論じられてこなかった。 たとえば,学習者から日本語の文法について質問を受けたときにすぐに答 えられるかとか,状況に応じて的確な例文を提示できるかとかいったことは これまでも話題になってきた。 しかし,それは,専門性だろうか。 専門性とは,その分野を専門にする人にしかできないこと,である。 では,日本語教師にしかできないこととは何か。教科書を時間内に教えた り,教科書に出てくる文型や語彙を効果的に教えるといったことは,ひとつ の現象に過ぎない。もっと本質的な視点が必要だろう。そういう議論が今ま でなかった。 1960年代からの「日本事情」の教育と研究の歴史を調べていて,気づいた ことがある。「日本事情」の歴史は,まさに日本語教育全体を含む,大きな 日本語教育観の推移でもあるのだ。 この過程で,日本語教育の形式と内容が大きく変わり,その学習/教育観 もずいぶんと様変わりしている。その仕事に従事する人の専門性観にもかな り違いがあることがわかる。 たとえば,先日来議論のある誤用訂正ひとつにしても,もし専門性という 観点から考えたとき,どのような結論が導かれるのか。 この問題を考えることによって,今まで考えれもしなかった,新しい展望 の拓けることを期待しよう。 (ほ) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 私から一言 ■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 支援について思ったこと 矢本 美和 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 前学期,実習生として,早稲田大学日本語研究教育センターの「総合」に 参加した。 「総合」では,学習者(留学生)はレポート作成する。そして,実習生は, 自分たちも同じようにレポート作成を体験しながら,実習クラスで学習者の 支援をするのだ。 レポート作成は,予想以上に困難で,私は,学習者の手助けどころか,逆 に学習者の学習過程から学ぶところが多かった。そういった点では,学習者 に教えるのではなく,ともに学んでいくことを実感できたと思う。 しかし,コース修了時に感じたことは,「手助けになってなかった。結局, 私は何もできなかった気がする」など,反省ばかりだった。 先日,嬉しいことがあった。担当したグループの学習者に偶然会ったとき, 彼女が,こう言ってくれたのだ。 「あのときは,励ましてくれて,とても嬉しかった。すごくがんばろうと いう気になった。励ますの,上手。」 思いもよらぬことばだった。 彼女はレポートを何度も根気強く書き直し,その努力の結果,コース期間 中に,彼女のレポートは,ぐんぐんわかりやすく,よくなっていった。私は そのことを,率直に,学校で偶然会ったときなどに言っただけだったからだ。 そのときは手助けをしようとか,私は実習生だ,とかいう意識はまったく なく,ともにレポートを書いているもの同士として,私も頑張るよ,という 気持ちで彼女に伝えたことだったからだ。 私のことばが,彼女が意欲をもつひとつのきっかけになったことはとても 嬉しかった。実習生として支援しなければ,と気負っても特になにもできな かったが,実習生という立場を意識せずに心から自然に出たことば,それが, 結果的に彼女への手助けになったのだ。誰かの(今回は彼女の)役に立つこ とが少しはできたのだなあ,と素直に喜べた。 もうすぐ,今学期の授業が始まる。今回の学習者にとってはなにが有用な 支援なのか,もちろん予想はつかない。しかし,今学期はまず,支援しなけ ればならない,という私自身の中に残っているこだわりを捨ててのぞんでみ たい。 (早稲田大学大学院日本語教育研究科修士課程) --【 投稿お願い 】------------------------------------------------ 「私から一言」に,このメルマガの読者の方々から広くご意見をいただき たい。日本語教育にかかわることなら何でも結構,ただし,個人や団体の誹 謗中傷の類はご遠慮いただきたい。随時,下記のアドレスにメールをいただ ければ幸いである。 細川英雄 hosokawa@waseda.jp ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ Web Site 更新 ■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ==【授業評価アンケート公開】========================================= 早稲田大学大学院日本語教育研究科,細川英雄担当講座の授業評価アンケー トの結果を公開しました。以下のアドレスからご覧ください。[PDF:38KB] http://faculty.web.waseda.ac.jp/hosokawa/enquete.pdf なお,講義の内容については,以下のアドレスでご覧ください。 http://faculty.web.waseda.ac.jp/hosokawa/class.htm#youkou ==================================================================== ■ おしらせ ■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ==【シンポジウム】================================================== □ 日本語と日本研究 〜日本を知るための日本語とは〜 □ 国際交流基金設立30周年・関西国際センター開設5周年記念シンポジウム □ http://www.jpf.go.jp/j/kansai/news/seminar020918.html ==================================================================== 国際交流基金設立30周年・関西国際センター開設5周年記念の本シンポジ ウムでは,専門日本語研修の中でも日本研究者・大学院生に対する日本語研 修に関連して,現在日本研究の第一線で活躍しておられる方々に報告いただ き,議論を深めます。多数の皆様のご来場をお待ちしております。 ●期日:平成14年11月1日(金) 10:00〜17:30 ●場所:国際交流基金関西国際センター(大阪府泉南郡田尻町) ●申込方法等,詳しくは http://www.jpf.go.jp/j/kansai/news/seminar020918.html をご覧ください。 ==【サイト開設】==================================================== □ 「みんなの教材サイト」 --- http://www.jpf.go.jp/kyozai/ □ 国際交流基金日本語国際センター ==================================================================== 国際交流基金日本語国際センターでは,日本語教材作成を支援するために, 「みんなの教材サイト」(http://www.jpf.go.jp/kyozai/)というウェブサ イトを開設しました。初級日本語教育素材集など自分で教案や教材を作成す る際に利用しやすい仕組みや,教材作成のノウハウ,教案や教材を集めた「み んなのアイディア」など,多数掲載していますので,是非,ユーザー登録の 上,ご利用いただければ幸いです。 http://www.jpf.go.jp/kyozai/ ==【出版情報】====================================================== □ アルク「月刊日本語」10月号 ― 特集:よく効く!ブラッシュアップ術 □ 座談会「大学院へ行こう!」 http://www.alc.co.jp/gn/ ==================================================================== 明日の授業を変えるための特集です。ブラッシュアップの一つ,大学院を 取り上げます。日本語学校を辞めて大学院に通う方などの話を通して,大学 院での学び方を紹介します。 (c) Space Alc ●出席者:井上靖夫(放送大学大学院),竹田ひかり(東京学芸大学大学院) 渡辺由美子(桜美林大学大学院) ●司会:細川英雄(早稲田大学大学院日本語教育研究科) ==【無料講演・説明会】============================================== □ 朝日カルチャーセンター「日本語教師養成講座」講演会[無料] ==================================================================== 朝日カルチャーセンターの「日本語教師養成講座」の募集にあたり,無料 講演会・説明会を開催します。ぜひご参加ください。 ●日時:12月7日(土) 15:30- ●第1部:講演(15:30-)「国際化のなかの日本語教師―学習・教育・研究 を結ぶ視点―」細川英雄(早稲田大学日本語教育研究科教授) ●第2部:講座説明会(17:00-18:15) ●場所:朝日カルチャーセンター内 教室(新宿住友ビル43階) ●お申し込み:要予約(定員になり次第,締め切らせていただきます) 朝日カルチャーセンター日本語科まで,電話またはE-Mailで TEL 03-3344-1965(月〜土 10:00-18:30) E-mail nihongo@acc-web.co.jp ==================================================================== ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 誌 名:ルビュ「言語文化」33号 発行日:2002年10月4日(毎週金曜日発行) 発行所:言語文化教育研究室 〒169-8050 新宿区西早稲田1-7-14 早稲田大学大学院日本語教育研究科内 編集,発行責任者:細川英雄 http://faculty.web.waseda.ac.jp/hosokawa/ 配信システム:まぐまぐ http://http://www.mag2.com/ ────────────────────────────────── 登録,解除の手続きは, http://faculty.web.waseda.ac.jp/hosokawa/mmaga.htm 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