2002/02/07

[RLC020207]ルビュ言語文化 第11号

[2002-02-07] Revue Langue et Culture
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[ 週刊 ] ル ビ ュ 言 語 文 化 (RLC) ── 第11号 ──

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■ 第11号もくじ ■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇研究室より
◇日本語教育とは何か(10)―添削という病い
◇院生からひとこと‥森の入り口にいるリスの話   全 映宣
◇おしらせ‥ベルリン・シンポジウム ほか
◇刊行物のお知らせ‥『日本語教育は何をめざすか』 ほか
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■ 研究室より ■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 人はどうやら「円滑なコミュニケーション」を求めているらしい。たしか
に時間もお金もたくさんあった方がいいし,コミュニケーションだって円滑
であった方がいいかもしれない。でもそれじゃ,人生あんまりおもしろくな
いな,と思う。いろんな人に会い,いろんなことがあって,大変たいへん,
と言っているうちに時が過ぎていく。大過なく,大過なく,というのもいい
けれど,旺盛な批判的精神でもっと過激に生きてみたい。円滑さを求めて,
言い訳ばかりの人生なんて,ご免だ。              (ほ)
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□ 日本語教育とは何か(10)
□ 添削という病い
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 ことばの教室ではしばしば作文添削の方法やその苦労が話題になる。
 学習者が書いた文章を添削するのは,教師として当然の務めであり,その
ためには効率的かつ教育的な添削を行わなければならない。しかも,クラス
人数が多い場合,良心的な添削を行おうとすると,そこには大変な負担が強
いられることになる。だから,この添削という行為そのものにアレルギーに
なってしまい,作文を書かせることをやめてしまう教師も多いという。
 しかし,ここでちょっと立ち止まって考えてみよう。
 ここでは,添削とは何か,という問題がまったく考えられていないことに
気づくだろう。添削というのは,教師が学習者に対して行う行為であるが,
そこには教師の持つ「正しい日本語」によって学習者の「誤った日本語」を
修正するというヒエラルキーが存在する。学習者の文章を教師が訂正するの
は当然のことであり,それを放棄したら教師の仕事はなくなると思う人も少
なくないだろうが,そこでちょっと考えてほしい。
 教師は学習者の「考えていること」が本当にわかっているのだろうか。ま
た,その「考えていること」は添削という行為によってどこまで引き出すこ
とができるのだろうか。このように考えると,「何のために添削するのか」
という問いは,「何のために日本語を教えるのか」という問いとそのままつ
ながっていることがわかるだろう。
 学習者は教師の添削を受けることで,いつのまにか自分で「考えること」
をやめてしまってはいないだろうか。たとえば,テニヲハは日本語の命であ
り,これを忽(ゆるが)せにはできないということばの教師は多い。しかし
同時に,もしテニヲハが文章の命であるとしたら,学習者の文章の中のテニ
ヲハを修正したとき,「正しい日本語」の名のもとに学習者の「考えている
こと」の自律と尊厳を封じ込めてしまっていることにどれだけの教師が気づ
いているだろうか。
 では,どうしたらいいの? こういう質問を受けるとき,それを考えるの
が教師の仕事でしょう,と答えることにしている。もちろん,僕には僕なり
の答えはある。でも,それを聞いてしまったら,その教師はそのとたんに添
削を受ける学習者と同じ思考パターンに陥るのでは?
 以下次号をお楽しみに!                   (ほ)
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■□ご意見ください!!
 この「日本語教育とは何か」のコーナーでは,読者の方々の,いろいろな
意見を紹介しつつ,日本語教育の問題をみんなで考えていく「場」としたい
と考えています。どうぞHPの掲示板にお便りをください。できれば,記名の
ものを望みますが,匿名でも受け付けます。
 皆さんからのメールを待っています。
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◆『日本語教育は何をめざすか―言語文化活動の理論と実践』◆
         ◆ 細川 英雄著 ◆
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     著者15年の「日本事情」研究の集大成。
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新刊問い合わせ殺到,ご要望に応えられなくてごめんなさい。
新刊は,全国書店にて入手できます。通信販売ではありません。
最寄の書店,大学生協等にご予約ください。
目次は,上記HPで見られます。読後感想等,お願いします。


■ 院生からひとこと ■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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□森の入り口にいるリスの話
□日本語教育研究科1年(01秋期生) 全 映宣
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 ふっとリスになっている自分に気ついたらどうしますか。
 自分だけ気が付かなかったものの,今までずっとそこにあった広い森へ,
かごから急に出された自分に気が付いたらどうしますか。
 自分は何もかもけっこう考えてきたつもりだがそれが回し車をぐるぐる回
るリスのように,もうすでに他人によって決まっている思考の反復だったと
したらどうしますか。

 一所懸命に回してきた回し車が,そこから見てきた景色が,自分のもので
はないことがわかることは難しいこと。
 それがわかるところに今私はいます。
 その全部ではなかったことをわかったとしてもそこから抜け出すことも難
しいこと。
 それができるところに今私はいます。
 私は今かごを出たばかりの,森の中をさまよいながら自分ひとりの考えで
周りを見て行くことを怖がっている小さなリスですが,これから森でのいろ
いろな出会いから自分だけの考えを得て行けるのでしょう。
 これからは広い森で自分の中から生まれた考えを持って表現していこうと
思っています。

 その森の入り口である言語文化研究室に来てみませんか?
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◆ 「総合活動型日本語教育」への疑問,質問に答える ◆
◆ 早稲田大学大学院日本語教育研究科言語文化研究室 ◆
 □□ http://faculty.web.waseda.ac.jp/hosokawa/qanda.htm
 □□ 当言語文化研究室で設計した「総合活動型日本語教育」に関して
 □□ 今までにいただいたご意見,ご質問に対する考えを述べました。
 □□ ご意見やご質問をお寄せいただければ幸いです。
 参考として『日本語教育と日本事情―異文化を超える』(細川英雄著・
 明石書店)をご覧ください。HPで目次が見られます。
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■ おしらせ ■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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3月にベルリンで会いましょう!
□ドイツ語圏 大学日本語教師会 第8回 2002年 ベルリン・シンポジウム
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●期日:2002年3月22日(金)〜24日(日)
●テーマ:グローバル化時代の『日本語教育・日本事情教育』─ 理論と
 実践
●招待講師:細川英雄(早稲田大学日本語研究教育センター・教授)
●協賛:日独ベルリンセンター Japanisch-Deutsches Zentrum Berlin
 連絡先 Dr. Yoriko Yamada-Bochynek, 
     e-mail: yayo@zedat.fu-berlin.de

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このシンポジウムのための参加ツアーを大学院の張さんが企画中で
す。参加を考えていらっしゃる方,下記に連絡してみてください。
 日本語教育研究科(01秋期生)
 張 珍華(チャン・ジンハ) <changhwada@hotmail.com>
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■日本語教育新聞 2002年1月1日発行 800円(消費税込み)
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□大学院訪問シリーズ 早稲田大学大学院日本語教育研究科「早稲田から世
 界へ」
□日本語教育新聞社 TEL:03-3352-1900 FAX:03-3352-1911
◇日本語教育研究科・崔明淑さん(01秋期生)も出ています。
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毎回お届けする日本語教授レシピは楽しい授業にするためのヒント
がいっぱい!また,日本語や日本語教育,日本文化などに関する様
々な疑問・質問・悩みについても語り合います。日本語や語学教育
などに関心のある方,是非ご参加ください!(^.^)ノ
      http://www.kfcs2000.com/f/index.html
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■ 日本語教師養成学校&海外プログラムガイド2002
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□イカロス出版 2002年3月発行
□大学院で学ぶ日本語教育
  ―早稲田に行きたくなる!大学院日本語教育研究科の魅力が満載!―
  当研究室の塩谷奈緒子さん(01秋期生)も出ています。
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■ 日本語教育学公開講座−21世紀の日本語教育学へ−
□ 新学期登録受付中。定員になり次第〆切ります。
□ http://www.waseda.ac.jp/cjl/koukaikouza/koukaikouza.htm
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 近年のあわただしい国際化の動きの中で,外国人のための日本語教育も大
きく確実に変容しつつあります。この講座では,その現状と歴史を踏まえつ
つ,社会・文化とのかかわりや新しいマルチメディアの教育も視野に入れて,
21世紀の日本語教育への展望を早稲田から提案します。

 これから日本語教育を学んでみようという方々を対象に,外国語としての
日本語を中心に,広くことばと教育の問題を考えてみたいと思います。日本
語教育学の基礎を習得しようと考えられている方にとっては,早稲田大学日
本語研究教育センター・大学院日本語教育研究科の専任スタッフによる「日
本語教育学公開講座」は,最適の講座といえます。

□受講対象:日本語教育に関心があり,主にこれから学習を始めようとして
 いる方
□講座期間:前半)2002年4月13日〜2002年6月29日
      後半)2002年9月28日〜2002年12月21日
      (※5月4日,11月2日は休講)
□講座時間:上記期間の土曜日(祝日は休講)10:00〜11:00,11:15〜12:15
□早稲田大学中央図書館の利用:受講期間に限り,早稲田大学中央図書館を
 利用することができます。(利用の際は,受講証を提示して,入館カード
 の交付を受ける必要があります。)
□講座日程:通年講義・全22回
 回数  月日        タイトル         担当講師
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 1・2 4月13日・20日   日本語教育学の現状と歴史・吉岡英幸
 3・4 4月27日・5月11日 外国語教授法・・・・・・・川口義一
 5・6 5月18日・25日   日本語教授法・・・・・・・川本喬
 7・8 6月1日・8日   新しい日本語教育観・・・・宮崎里司
 9・10 6月15日・22日   社会・文化と日本語教育・・細川英雄
 11   6月29日      多民族共生と日本語支援・・川上郁雄
 <夏季休業>
 12・13 9月28日・10月5日 日本語の音声・音韻・・・・戸田貴子
 14・15 10月12日・19日   日本語の文字・表記・・・・鈴木義昭
 16・17 10月26日・11月9日 日本語の文型・文法・・・・北條淳子
 18・19 11月16日・30日   日本語の文章・談話・・・・佐久間まゆみ
 20   12月7日      日本語の語彙・・・・・・・小宮千鶴子
 21・22 12月14日・21日   日本語の待遇表現・・・・・蒲谷宏
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□受講終了後,希望者には受講証明書を発行します。
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【注目!!】ルビュ言語文化(RLC)では,日本語教育関係のメルマ
ガやホームページとのリンクを積極的に推進しています。
このメルマガとの連携に興味のある方,お便りください。
      発行責任者:細川英雄 hosokawa@mn.waseda.ac.jp
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■ 刊行物のお知らせ ■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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□『日本語教育は何をめざすか―言語文化活動の理論と実践』
□ 細川 英雄 著  明石書店 6,500円
□ http://faculty.web.waseda.ac.jp/hosokawa/naniwo.htm
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 ・著者15年の「日本事情」研究の集大成。
 ・ことばと文化を結ぶ,画期的な日本語教育原論。

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□アルク「月刊日本語」2002年1月号 発売
□特集「日本事情 あなたはどう教えますか?」
□http://www.alc.co.jp/gn/
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 ・日本語学習におけるコミュニケーションと社会文化行動
   ―60年代からの試みと現在の課題       J.V.ネウストプニー
 ・言葉と文化を結ぶ地平―総合活動型日本語教育のめざすもの 細川英雄
 ・「日本事情」研究の昔と今               牲川波都季
 ・日本事情の授業に潜入―佐々木瑞枝,小田切隆,泉史生ほか
 ・日本事情に関する参考文献等,盛り沢山の情報が一杯!
◇2月号には,当研究室の于之玲(01春期生)さん,4月号「日本語教師にな
 るまで物語」には,大尾嘉昭恵さん(01秋期生)さんも出ています。
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□「論集ひととことば」
□http://faculty.web.waseda.ac.jp/hosokawa/htkt_jn.htm
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 当言語文化研究室での活動を中心にした交流誌です。
 半期1冊のペースで,大学院生ほかのレポート等を掲載しています。従来
の「ひととことば」(ひつじ書房発売)を一新し,電子媒体による新方式と
なりました。内容は,HPのPDFで見られます。乞アクセス。
 http://faculty.web.waseda.ac.jp/hosokawa/htkt_jn.htm
■当研究室への参加を考えていらっしゃる方に是非おすすめ!
 レポートの水準は読者の方の判断にお任せします。
 現在,第2号鋭意編集中。

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□「21世紀の「日本事情」― 日本語教育から文化リテラシーへ」
□http://faculty.web.waseda.ac.jp/hosokawa/21c.htm
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 今,最も新しい「日本事情」研究の専門誌です。最先端の理論と実践が満
載,この雑誌を知らずして「日本事情」はもはや語れません。くろしお出版
刊。全国書店にて1〜3号好評発売中。投稿熱烈歓迎。
■第4号の投稿〆切は,4月末日です。皆さんの投稿をお待ちしています。
 投稿規程:http://faculty.web.waseda.ac.jp/hosokawa/21c.htm
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     今,早稲田の日本語教育がおもしろい。
      もっともホットでニュースな大学院,
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     ◇ http://www.waseda.ac.jp/gsjal/ ◇
          入学願書配布中。
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 誌 名:ルビュ「言語文化」11号
 発行日:2002年2月7日(毎週木曜日発行)
 発行者:言語文化研究室
     〒169-8050 新宿区西早稲田1-7-14
     早稲田大学大学院日本語教育研究科
 編集責任者:細川英雄
     http://faculty.web.waseda.ac.jp/hosokawa/
 配信システム:まぐまぐ
     http://http://www.mag2.com/
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 登録,解除の手続きは,
     http://faculty.web.waseda.ac.jp/hosokawa/mmaga.htm
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(c) 2002 Hosokawa, H. Lab. 無断転載を禁じます。

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