2002/01/17

[RLC020117]ルビュ言語文化 第8号

[2002-01-17] Revue Langue et Culture
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[ 週刊 ] ル ビ ュ 言 語 文 化 (RLC) ── 第8号 ──

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■ 第8号もくじ ■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇研究室より‥日本語教育とは何か(7)―母語を超えるという思想
◇院生からひとこと‥思考を鍛え,表現を鍛える 塩谷 奈緒子
◇おしらせ‥第9回 国語と日本語の連携を考える会 ほか
◇刊行物のお知らせ‥アルク「月刊日本語」2002年1月号 ほか
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■ 研究室より ■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 1月になって,「総合」を初めとする,いくつかのクラスが相互自己評価
に入っています。相互自己評価というのは,半年間の学びの成果をレポート
の形でクラスに提出し,クラスメートからの評価を浴びるとともに,自分の
書いたレポートも自分で評価するというものです。留学生別科,学部学生,
大学院生とそれぞれ段階が異なりますが,興味深いのは,留学生や学部生の
中になかなか辛辣なものがあるということです。それに比べて,大学院生の
クラスでは,全体的に遠慮のような雰囲気があって,いわゆる“つっこみ”
が足りないのは何とも皮肉なことです。そんな場面では,ついシニカルな批
評をしたくなるのをぐっとこらえて,ニコニコ微笑むことにしています。
                               (ほ)

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□日本語教育とは何か(7)―学習者がことばと文化を結ぶ
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 従来,ことばは文化であり,文化はことばだとされながら,その実態は定
かではなく,具体的にどのように学ぶことができるのかが明確ではありませ
んでした。ことばを学ぶとは文化を学ぶことだと古くから言われ,ことばが
わかるとその社会に早く溶けこめるとされる理由はどこにあるのでしょうか。
反対に,ことばがわからないと,その社会に溶けこめないのはなぜなのでしょ
うか。
 たとえば,文化人類学者フランツ・ボアズは,研究調査と言語使用の関係
についてこう書いています。

 言語に熟達することは正確で徹底した知識を得るための欠くことのできな
い手段ですといわねばならない。なぜなら,ほとんどの情報がネイティヴの
会話を聞いたり彼らの日常生活に参加することによって得られるからであり,
言語を使いこなせない観察者は,そうしたものにまったく近づけないからで
ある。(ボアズ 1911: 60)

 これは,わたしたちがことばを通してその社会の一員として認知されると
いうことを示唆していると言えるでしょう。しかし,この場合の「文化」と
は何でしょうか。それは,その社会の一員としてことばによって他者と自己
との人間関係をどのように取り結ぶことができるか,ということです。つま
り,「ことばがわかるとその社会に早く溶けこめる」のは,言語使用によっ
てその社会での他者との個人的な交流が可能になり,自己表現がしやすくな
るからだと言うことができます。決してその社会に関する専門的な知識習得
のことを言っているわけではありません。だからこそ,「ことばを学ぶとは
文化を学ぶことだ」と解釈することができるのです。したがって,この場合
の「文化」とはその社会に関する情報ではなく,言語使用の上での絶対不可
欠な条件としての,自己を取り囲む状況への認識とその判断の力ということ
になるのです。

 この認識と判断の力をどのように自覚化し,どのように運用するかは,す
べて学習者自身の問題だということになります。こうした立場にたってはじ
めて,「学習者主体」という考え方が生まれるのです。「学習者主体」とは,
たんに学習者の意思のままに教室を運営することや,学習者ニーズといわれ
るものにしたがってテーマを設定したり活動を任せたりすることではありま
せん。ことばと文化がすべて学習者個人の中にあるという立場によってはじ
めて生じる考え方なのです。

 以下次号をお楽しみに!                   (ほ)
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+─[新刊予告]──────────────────────+
     著者15年の「日本事情」研究の集大成。
   ことばと文化を結ぶ,画期的な日本語教育原論。
◆『日本語教育は何をめざすか―言語文化活動の理論と実践』◆
         ◆ 細川 英雄著 ◆
    ◆明石書店より 2002年1月31日刊行予定◆
 ◇ http://faculty.web.waseda.ac.jp/hosokawa/akashi.htm ◇
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■ 院生からひとこと ■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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□思考を鍛え,表現を鍛える
□日本語教育研究科1年(01秋期生) 塩谷 奈緒子
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 あなたは,日々「考えて」生きていますか?
「いやぁ,考えてないなぁ」と思ったそこのあなた。総合クラス(総合活動
型学習)に参加してみましょう。あなたの前に,新たな知的世界が現れるや
もしれません。そして,「当然!私はいつも考えてます!」と思ったそこの
あなた。それは本当に「あなたの」考えですか?総合クラスで確かめてみま
せんか?

2001年秋学期,総合クラスのメンバーは,早稲田大学別科生17人と院
生8人+ボランティア1名。レポートのテーマは,「子供と私」,「手紙と
私」,「六本木と私」等様々(テーマは,各人が自分の興味に即して決めて
OK)。そして,私達は,対象と自分との関係について考え,ことばを紡ぎ
出し,ことばを発し,ことばを受け取り,そしてまた考えます。

「考えることをやめたら人間やめること」とは担当者の言。斯く言う私も,
「思考と表現の往還」を前にして,思考を鍛え,表現を鍛えるべく,考え続
ける毎日です。
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■ イカロス・ムック
■「日本語教師養成学校&海外プログラムガイド」 2002年度版
□ 特集:大学院で学ぶ日本語教育 早稲田大学大学院日本語教育研究科
  !!注目!!
◇ 塩谷奈緒子さんも登場しています。
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◆ 「総合活動型日本語教育」への疑問,質問に答える ◆
◆ 早稲田大学大学院日本語教育研究科言語文化研究室 ◆
 □□ http://faculty.web.waseda.ac.jp/hosokawa/qanda.htm
 □□ 当言語文化研究室で設計した「総合活動型日本語教育」に関して
 □□ 今までにいただいたご意見,ご質問に対する考えを述べました。
 □□ ご意見やご質問をお寄せいただければ幸いです。
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■ おしらせ ■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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開 催 迫 る !

□第9回 国語と日本語の連携を考える会
 http://faculty.web.waseda.ac.jp/hosokawa/semi.htm
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来聴自由! 事前申し込み等不要です。みなさまふるってご参加ください。
●テーマ:自立を育てる言語教育
●期 日:2002年1月26日 15:00-18:00
●会 場:早稲田大学22号館(黄色いビル)
●話題1:Critical Thinkingからパラグラフ・ライティングへ
     加納なおみ(東京水産大学)
●話題2:自立を支援する ―ジェンダー・センシティヴの総合的教育実践
     を手がかりに
     飯田睦美(山梨県増穂南小学校)
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今年はベルリンで 会いましょう!

□ドイツ語圏 大学日本語教師会 第8回 2002年 ベルリン・シンポジウム

●期日:2002年3月22日(金)〜24日(日)
●テーマ:グローバル化時代の『日本語教育・日本事情教育』─ 理論と実践
●招待講師:細川英雄(早稲田大学日本語研究教育センター・教授)
●協賛:日独ベルリンセンター Japanisch-Deutsches Zentrum Berlin
 連絡先  Dr. Yoriko Yamada-Bochynek, 
     e-mail: yayo@zedat.fu-berlin.de

注 目 !
■このシンポジウムのための参加ツアーを大学院の張さんが企画中です。参
 加を考えていらっしゃる方,下記に連絡してみてください。
 日本語教育研究科(01秋期生)
  張 珍華(チャン・ジンハ) <changhwada@hotmail.com>
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□言語教育国際シンポジウム
□コミュニケーションにかかわる言語能力 ― テスト開発と測定・評価 ―
 パネリスト:ライル・F・バックマン博士ほか
 2002年3月21日(木・祝日) 学術総合センター(千代田区一ツ橋)

□言語能力測定に関する講演会
□「コミュニケーション能力をどう測るか:現状と展望」
 講演:ライル・F・バックマン博士(カリフォルニア大学ロサンジェルス
    校教授)
 2002年3月23日(土) 国立オリンピック記念青少年総合センター(渋谷区
 代々木)

□言語能力測定に関するワークショップ
□「テストの設計と作成」
 講師:ライル・F・バックマン博士
 2002年3月24日(日) 学術総合センター(千代田区一ツ橋)

■以上の参加申し込みは,下記まで。
 〒101-0065 千代田区西神田2-4-1東方学会会館2F (社)日本語教育学会
 FAX:03-5216-7552 E-mail:nkg@mb.kcom.ne.jp
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□横浜市国際交流協会 主催
□講座「共に生きる地域をめざして PART2」(あと2回。各回申し込み制)
□http://www.yoke.city.yokohama.jp/
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●第1回講座(すでに終了)
●第2回講座(※申し込みは1月7日〜上記方法で受付。先着順。)
期日: 1月27日(日)14時〜16時
会場: 横浜国際交流ラウンジ(産業貿易センタービル9階)
内容: 池上摩希子氏(中国帰国者定着促進センター,『子どもメール』担
    当)による講演など。質疑応答あり。
定員: 50名(先着順)
費用: 500円
●第3回講座
期日: 2月23日(土)13時半〜16時
会場: 横浜国際交流ラウンジ
内容: とよなか国際交流協会「子どもメイト」,川崎市のポルトガル語母
    語学習グループ,横浜市内の補習教室の実践報告など。
定員: 50名(先着順)
費用: 500円
(財)横浜市国際交流協会(YOKE)
http://www.yoke.city.yokohama.jp/
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 ◆◆◆ めるマガ『日本語教師,あ・つ・ま・れ〜!』 ◆◆◆
毎回お届けする日本語教授レシピは楽しい授業にするためのヒント
がいっぱい!また,日本語や日本語教育,日本文化などに関する様
々な疑問・質問・悩みについても語り合います。日本語や語学教育
などに関心のある方,是非ご参加ください!(^.^)ノ
      http://www.kfcs2000.com/f/index.html
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【注目!!】
ルビュ言語文化(RLC)では,
日本語教育関係のメルマガやホームページとのリンクを積極的に推
進しています。
このメルマガとの連携に興味のある方,お便りください。
      発行責任者:細川英雄 hosokawa@mn.waseda.ac.jp
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■ 刊行物のお知らせ ■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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□アルク「月刊日本語」2002年1月号 発売
□特集「日本事情 あなたはどう教えますか?」
 ・日本語学習におけるコミュニケーションと社会文化行動
   ―60年代からの試みと現在の課題       J.V.ネウストプニー
 ・言葉と文化を結ぶ地平―総合活動型日本語教育のめざすもの 細川英雄
 ・「日本事情」研究の昔と今               牲川波都季
 ・日本事情の授業に潜入―佐々木瑞枝,小田切隆,泉史生ほか
 ・日本事情に関する参考文献等,盛り沢山の情報が一杯!
◇2月号には,当研究室の于之玲(01春期生)さんも出ています。
□http://www.alc.co.jp/gn/

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□「21世紀の「日本事情」― 日本語教育から文化リテラシーへ」第3号
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 今,最も新しい「日本事情」研究の専門誌です。最先端の理論と実践が満
載,この雑誌を知らずして「日本事情」はもはや語れません。くろしお出版
刊。全国書店にて好評発売中。投稿熱烈歓迎。
http://faculty.web.waseda.ac.jp/hosokawa/21c.htm

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□「論集ひととことば」創刊号 刊行
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 大学院日本語教育研究科開設に伴い,従来の「ひととことば」(ひつじ書
房発売)を一新し,当研究室での活動を中心にした電子媒体による新方式の
交流誌を刊行します。半期1冊のペースで,大学院生のレポート等を掲載し
ます。内容は,HPのPDFで見られます。乞アクセス。
http://faculty.web.waseda.ac.jp/hosokawa/htkt_jn.htm
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◇ http://www.waseda.ac.jp/gsjal/ ◇
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 誌 名:ルビュ「言語文化」8号
 発行日:2002年1月17日(毎週木曜日発行)
 発行者:言語文化研究室
     〒169-8050 新宿区西早稲田1-7-14
     早稲田大学大学院日本語教育研究科
 編集責任者:細川英雄
     http://faculty.web.waseda.ac.jp/hosokawa/
 配信システム:まぐまぐ
     http://http://www.mag2.com/
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 登録,解除の手続きは,
     http://faculty.web.waseda.ac.jp/hosokawa/mmaga.htm
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(c) 2002 Hosokawa, H. Lab. 無断転載を禁じます。

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