2001/11/29
[RLC:011129]ルビュ言語文化 第3号 350部突破!
[2001-11-29] Revue Langue et Culture #################################################################### [ 週刊 ] ル ビ ュ 言 語 文 化 (RLC) ── 第3号 ── #################################################################### ■ 第3号もくじ ■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◇研究室より‥日本語教育とは何か(2) ◇院生からひとこと‥衝撃! 細川語録! 今井なをみ ◇特集:志村第四中学校より学生来訪(2)‥「総合」クラスを見学して ◇おしらせ‥関西日本語国語教育研究会,第二言語習得研究会全国大会, 国語と日本語の連携を考える会 ◇刊行物のお知らせ‥「論集ひととことば」創刊号,「21世紀の「日本事 情」」第3号 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 研究室より ■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ==================================================================== □日本語教育とは何か(2) ==================================================================== 日本語を学習することが日本語によるコミュニケーション能力をつけるこ とだというところは異議がない。そのためには,もちろんそれなりの文型や 語彙は必要だろう。問題はその次だ。 「適切な場面をタスクやロールプレイによって設定」するという発想はど こから生まれるのだろう。こんなことを考えていて,ふと思いついたのが, 文化のスクリプトの問題である。 「日本人は風呂に入る前に必ず身体を洗ってから湯船に入るから,日本で 風呂の入る場合は必ず身体を洗わなければならない」というような日常生活 のスクリプトを教え,それによって日本を理解できるようにするという発想 となんとよく似ていることか! こうした集団文化のスクリプトを情報として与えつづけると,学習者はい つのまにか自分でものを考えなくなる。「この国では…」「この国の人は…」 という発想にがんじがらめになって,自分からコミュニケーションができな くなるのである。 この場面の問題も同じことが言えないだろうか。「初対面では…」「買い 物では…」「ビジネス場面では…」というように,場面のスクリプトを積み 上げていくと,それに適合しない場面に出会ったとき,パニックが起こる。 パニックが起こるだけならまだしも,それによって結局,他者との人間関係 が阻害され,信頼関係を結べなくなるという不幸な結果を生じかねない。 そう考えてみると,コミュニケーション能力をつけるためには,まず語彙 と文型という発想からもう一度原点に返って考えてみる必要があるだろう。 コミュニケーションとは何か,その場合のことばとは何か。創造的な日本語 教育を考えようとする人はこういう問いを決して忘れてはならないと思う。 (ほ) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ +──────────────────────────[PR]─+ ◆ 早稲田大学大学院日本語教育研究科言語文化研究室 ◆ □□ http://faculty.web.waseda.ac.jp/hosokawa/ □□ 今,早稲田の日本語教育がおもしろい。 □□ ニュースでホットな日本語教育研究科へようこそ。 +─────────────────────────────+ ■ 院生からひとこと ■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ==================================================================== □衝撃! 細川語録! □日本語教育研究科 M1(01秋期生)今井なをみ ==================================================================== 今回は院生今井が担当します。 まだこの「工房」に出入りしてから3ヶ月ですが,私の頭の中は今・・衝撃 の受けっぱなしです。これまで私が衝撃をうけた細川語録をご紹介します。 (ほ)「日本事情」はない。 (ほ)「教科書」はいらない。 (ほ)「文化」はみせられないでしょ? 今井問「じゃあ日本語教師はなにやるんですか!!」 (ほ)「それは,あなたが考えること,あなたの問題。」 今井の頭の中「?」→「★□☆○??」→「¬?」→「☆▽★∴*○」→「!!!」 (ほ)「私は当たり前のことを言っている。」 院を修了するころは,お肌ぼろぼろ一気に老けているのではないか!!と多 少不安に思っております。それも「私の問題」なんですが・・・。語録の意 図「なぜなら〜」については,細川英雄著『日本語教育と日本事情』にあり ます。納得するか,異論をもつか・・ いずれにしても,ぜひご自身で「私をくぐらせて」みてください。 追録:最新語録 (ほ)「今こそ,パロールの復権を!」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ +──[PR]───────────────────────+ ◆『日本語教育と日本事情−異文化を超える』◆ 細川 英雄 著 明石書店 ISBN4-7503-1211-8 本体:2000円.(四六判256頁) ◇ http://faculty.web.waseda.ac.jp/hosokawa/akashi.htm ◇ +───────────────────────────+ ■ 志村第四中学校より学生来訪 ─「総合」クラス見学 ■━━━━━━ 先週に引き続き,“職場体験”で中学生が11月15日(金)当研究室を訪れま した。以下は,「総合」クラス見学記です。 ==================================================================== □福田大空 ==================================================================== 私が今日ここに来て,驚いたことは,建物が会社の様だったことです。中 は,とてもきれいで,研究室は本や紙だらけで,研究してるなという感じが しました。 授業を一緒に受けていて感じたことは,文法とか言葉は少し違う感じだっ たけど,すごくしっかりとレポートが書いてあって,考えとかも,今の私に は出てこないような言葉が書いてあって,さすがだなと思いました。そのレ ポートに,もっとこうした方がいいとか,いろいろな意見が出てきて,その 意見もやっぱり私は,なるほどなるほどと聞いているだけでした。レポート を読んで,いろいろな人がいろいろな考え方をしているんだということが分 かりました。国や地域によっても違うし,見聞きしたことでまた変わってい くし,それを人に伝えるというのは,しかも日本語で,大変で難しいと思い ました。でも,いろんな人の意見を聞くことで,少しずつ理解していくこと はいいことだなと思いました。 すごく学ぶことがたくさんあったし,みなさんも優しかったし,とてもい い体験になりました。 ==================================================================== □今日の体験について…… □青山奈央 ==================================================================== ちがう国の人達が一緒に勉強するという授業風景は初めてだったけど,意 外におもしろかった。外国の人がちがう国の言葉を使って作文を書くのはと てもむずかしいと思った。その書いた事はその国の人が見てもよく分からな かったりした。アジアの人が多かった。みんなやさしく接してくれてうれし かったし,きんちょうもとけた。 建物はとてもきれいだった。けれど,研究室は本棚が2個も重なっていて すごく,少しごちゃごちゃしていて,入ったしゅんかんビックリした。今回 の授業で日本がこんなに奥深いものだとは思ってなかった。みんなが話しあ っていてかせつがなかなかまとまらないとき,細川先生が簡単に言っていて, なんでたくさんのポイントをすぐにまとめられるのかなあと思った。90分は 長くてどうもねむくなってしまった。午後の授業が終わったあと,長谷川先 生がもってきたシュークリームを食べれたのはよかった。ジュースを一緒に 買いにきてくれた人はちょっとこわくて,気持ちがひけてしまった。 1日だけの体験だったけど,とても楽しく,とても長い1日で,とても疲 れたけど,とても楽しかった。 ==================================================================== □職場体験から学んだこと □本澤真菜子 ==================================================================== 今日の体験を通して初めて学んだことがありました。 研究生レポート「○○と私」を読みながら,外国の方には難しい日本語が あることを知りました。例えば,「友達の家に伺う」という言葉がとても面 白く感じました。私なら,「友達の家を訪ねる」というと思います。このこ とで,日本にしかない丁寧語・敬語を使うのは,とても難しいのだというこ とが分かりました。 考えてみたら,私の敬語を使うことはあまりないし,使い方もなっていな いことを知りました。日本人なのに,日本にしかない「敬語」の文化を理解 していないのは,恥ずかしいことだと思いました。そうやって考えてみると, レポートを読んでいる最中,知らない漢字がいくつかあったし,意味が分か らない言葉がありました。今まで,当たり前の様に話していた「日本語」が 分かっていたようで,知らないことは沢山ありました。 その他で気付いたことで,意味は確かに同じだけれど,「普通日本人はこ んな風に言わない」文もありました。これは,辞書か何かで調べて書いてい るのだなぁと予想していました。 やっぱり,「日常に使う言葉」は難しいことなのかも知れません。 また,これらのこととは別に,それぞれの国の習慣や考え方のちがいにつ いて,初めて知ったこともあります。 「特攻隊と私」というレポートを読んで,ずっと気にかかっていた一言が ありました。「戦争には被害者の国と加害者の国があると思っていました。」 という言葉です。この言葉に一つの疑問が浮かんできました。「戦争って相 手が悪いんじゃないの?」という疑問です。私は,このことが1日中,頭か ら離れませんでした。この疑問の答えを考えていたとき,このレポートの著 者は,韓国の方だということに気付きました。「ああそういうことだったん だ!!」初めて気付きました。 社会の授業で,「朝鮮半島というのは,沢山の国が欲しがっていたんだよ。 だから,植民地にされてしまったり,色々な侵略戦争が起こり沢山の国民が 苦しんだ。」という悲しい歴史を聞いた記憶があります。 そのことを言いたかった,というのが分かりました。その時,加害者(一 方的に国土を欲しがり,侵略しようとする国)と被害者(国をうばわれそう になり,必死に立ち向かった国)が存在する戦争を知りました。 そのことを知ってまた新たな疑問が浮かんできました。「何故自分はこの ことにいわ感を感じたのだろう?何故すぐにこの事実を理解し難かったのだ ろう?」というものです。すると今度はすぐに,答えが見つかりました。 「私は戦争のことを考えるとき,無意識のうちに,日本だけのことしか考え ていないのではないか?」ということです。もしそうなら……。 私は確かめてみたくなりました。そしてレポートの著者,張珍華さんに 「韓国では戦争についてどういう風に教えられるのですか?」と聞いてみま した。張さんは,「戦争についてまず一番に植民地のことをよく教えられま した。」と答えてくれました。やっぱり考えが当たっていました。 日本では,「原爆」について…韓国では「植民地」について…私は,自分 の国のことを知ろうとばっかりしていました。けれど,そのことで,「一方 的に攻撃されていた国」のことや,「罪もなく被害を受けた土地」のことを 見失っていました。張さんのレポートがそのことを私に教えてくれました。 戦争についての外国の考え方の違いを初めて実感しました。その意味で,こ の体験でとても学びました。 ありがとうございました。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ おしらせ ■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ==================================================================== □関西日本語国語教育研究会 ==================================================================== ●日時:2001年12月15日 14:30開会(受付13:30より) ●会場:小林聖心女子学院構内研究施設「マイヤーホール」(宝塚市塔の町) ●内容:標題(主題)「(国語)学力が低い?学力を低くさせている?」 実践報告と討論 ●会費:1000円 ●問い合わせ:千里国際学園内 井嶋悠 E-mail:yijima@senri.ed.jp 電話:0727-27-5070 FAX:0727-27-5077 ==================================================================== □第12回 第二言語習得研究会全国大会 ==================================================================== 時:平成13年12月15日(土),16日(日) 所:南山大学D棟DB1教室(アクセス:地下鉄鶴舞線いりなか駅1番出口より 徒歩15分。または,地下鉄東山線本山駅より市バス八事(やごと)11 「島田住宅」行きか,「平針住宅」行きに乗り「山手通二丁目」下車) http://www.ic.nanzan-u.ac.jp/CMAP/access.html#nagoya 12月15日(土):12時40分 受付開始 司会:坂本 正(南山大学) 1時 開会の挨拶(開催校伴紀子教授,カッケンブッシュ会長) 1時5分 基調講演(1) 田中真理氏(電気通信大学) 「ヴォイスの習得:L1とL2 proficiencyの観点から」 2時 基調講演(2) 深田 淳氏(パデュー大学・南山大学) 「日本語語用能力の習得と日本語教育」 3時15分 パネルディスカッション テーマ:「日本語の自然習得」 司会:長友和彦(お茶の水女子大学) 「在日ブラジル人の日本語モダリティ表現に関する習得の実態 −終助詞「よ」と「ね」を中心として」 エレン・ナカミズ氏(京都外国語大学) 「第2言語としての日本語における時間性表現の習得−ブラジ ル出身移住者の場合」 平高史也氏(慶応大学) 「外国人力士の日本語習得:学習環境と自然習得」 宮崎里司氏(早稲田大学) 5時30分 懇親会 ボン・マルシェ 司会:坂本 正(南山大学) 12月16日(日) 司会:大塚容子(岐阜聖徳学園大学) 10時 「ある中国人児童,来日3年間のテ形使用実態−発話資料と作 文資料の分析」 松本恭子(南山大学大学院) 10時30分 「ブラジル人児童生徒のL1の習得レベルがL2での教科学習 に及ぼす影響−算数文章課題の理解を通して」 川口直巳(名古屋大学大学院) 11時 「ブラジル人中学生の日本語能力と母語能力の関係−作文のタ スクを通して」 生田裕子(中部大学) 11時30分 「高校交換留学生のコミュニケーションの分析−共同課題解決 場面を事例として」 岡部悦子(早稲田大学大学院) 司会:大曽美恵子(名古屋大学) 1時30分 「中国人上級日本語学習者ビリーフからの視点:学習者自律意 識をどう捉えるか」 臼杵美由紀(北陸大学) 2時 「日本語学習者の発話権取得に見られる特徴−情報提供発話を 受け継ぐ場合」 木暮律子(名古屋大学大学院) 2時30分 「文法性判断テストを使った条件文の習得状況−正解率と確信 度スケールを用いて」 花城可武(オーストラリア国立大学大学院) 3時 「大学レベルにおける日本語授業での誤り訂正に対する意見と 学習者要因との関係」 藤岡典子(シンシナティ大学) 司会:坂本 正(南山大学) 3時40分 総会,閉会の挨拶(カッケンブッシュ会長) 費用:参加費 1500円(資料代) 懇親会費 2000円 連絡先:南山大学,坂本 正(tadsaka@nanzan-u.ac.jp) 電話(ダイヤルイン):052-832-3110,内線394 名古屋外国語大学,水田澄子(smizuta@nufs.nakanishi.ac.jp) 電話:05617-4-1111 ==================================================================== □第9回 国語と日本語の連携を考える会 http://faculty.web.waseda.ac.jp/hosokawa/semi.htm ==================================================================== 来聴自由! 事前申し込み等不要です。みなさまふるってご参加ください。 ●テーマ:自立を育てる言語教育 ●期 日:2002年1月26日 ●会 場:早稲田大学22号館(黄色いビル) ●話題1:Critical Thinkingからパラグラフ・ライティングへ 加納なおみ(東京水産大学) ●話題2:自立を支援する ―ジェンダー・センシティヴの総合的教育実践 を手がかりに 飯田睦美(山梨県増穂南小学校) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ +──────────────────────────[PR]─+ ◆◆◆ めるマガ『日本語教師,あ・つ・ま・れ〜!』 ◆◆◆ 毎回お届けする日本語教授レシピは楽しい授業にするためのヒント がいっぱい!また,日本語や日本語教育,日本文化などに関する様 々な疑問・質問・悩みについても語り合います。日本語や語学教育 などに関心のある方,是非ご参加ください!(^.^)ノ http://www.kfcs2000.com/f/index.html +─────────────────────────────+ ■ 刊行物のお知らせ ■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ==================================================================== □「論集ひととことば」創刊号 刊行 ==================================================================== 大学院日本語教育研究科開設に伴い,従来の「ひととことば」(ひつじ書 房発売)を一新し,当研究室での活動を中心にした電子媒体による新方式の 交流誌を刊行します。半期1冊のペースで,大学院生のレポート等を掲載し ます。内容は,HPのPDFで見られます。乞アクセス。 http://faculty.web.waseda.ac.jp/hosokawa/htkt_jn.htm ==================================================================== □「21世紀の「日本事情」― 日本語教育から文化リテラシーへ」第3号 ==================================================================== 今,最も新しい「日本事情」研究の専門誌です。最先端の理論と実践が満 載,この雑誌を知らずして「日本事情」はもはや語れません。くろしお出版 刊。全国書店にて好評発売中。投稿熱烈歓迎。 http://faculty.web.waseda.ac.jp/hosokawa/21c.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ +──[PR]───────────────────────+ ◆ 早稲田大学日本語教育研究科 ◆ 今,もっともホットな大学院,入学願書配布中 ◇ http://www.waseda.ac.jp/gsjal/ ◇ +───────────────────────────+ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行日:2001年11月29日(毎週木曜日発行) 発行者:言語文化研究室 〒169-8050 新宿区西早稲田1-7-14 早稲田大学日本語教育研究科 編集責任者:細川英雄 http://faculty.web.waseda.ac.jp/hosokawa/ 配信システム:まぐまぐ http://http://www.mag2.com/ ─────────────────────────────────── 登録,解除の手続きは, http://faculty.web.waseda.ac.jp/hosokawa/mmaga.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (c) 2001 Hosokawa, H. 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