教育関連分野における論文執筆の汎用的なガイドラインを,「言語文化教育研究所」より提案します。皆様のご意見をお寄せいただき,より良いものにしていきたく存じます。どうぞ info@gbki.org までお寄せ下さい。
なお予告なく変更修正がありますこと,ご了承下さい。
文献へのアクセス方法には,書店や図書館等での印刷媒体へのアクセスと,インターネット等での電子媒体へのアクセスとの2種類がある。いずれの文献情報も大規模なデータベースに登録されており,それによって該当文献の所在やアクセス方法,さらに一部は全文までを検索し閲覧することができる。論文に記述する文献情報は,こうしたデータベースで検索可能なだけの内容を備えている必要がある。
そうした内容に満足な文献情報の規格は,これまでにさまざまに提案され,それらに基づいた文献管理が行われている。しかし,以下のような問題がある。
結果,特に日本語のいわゆる文系の文献情報の規格は,さまざまなものが混在している。結果として,著者は,文献情報を正確に記述しようとしてもどう記述すべきかいちいち迷わされてしまう現状となっている。
そこで,本稿は,迷うことなく文献情報を記述できるように,かつ,その文献情報がデータベースを利用したアクセスに十分な内容を満たすように,文献情報の記述について規格化する。
この規格と,既存の日本語文献情報記述規格との違いは,以下のとおり。
本文中で文献を参照する際の基本書式は,下のとおり。
上のように,著者名と出版年を記述する。とおし番号ではなく出版年を記述する理由は,どんな時代の考えなのかを一目とするため。
団体種別(例えば,株式会社,社団法人,独立行政法人,NPO法人,など)は記述しない。ただし,それが固有名詞に含まれている場合(例えば,公立はこだて未来大学,横浜国立大学,など)は記述する。
複数の著者は「,」で区切る(全角コンマ)。理由は,同格の要素を並列する場合は,「,」を原則とするから(「・」(全角中点)は,「パク・ヨンハ,マイケル・ジャクソン」のように邦名以外の苗字と名前を区切る際に用い,これらを並列する場合も「・」を用いると,区切りが判別不可能となる。)
2度目以降は,「他」ではなく「ほか」とする。理由は,「ほか」という苗字が存在しないであろうことと,ひらがなであることで複数を表すマークとして苗字の漢字とは区別して見やすいこととから。ただし,丸カッコ内ではなく,本文の一部として複数の著者の著作物を指すために「ほか」を用いるべき場合,代わって「ら」としてもよい。理由は,「○○ら」のほうが文として読みやすいだろう上に,1文字削減できるから。
2度目以降でも,「同」や「前掲書」などとは書かない。理由は,文字数の節約がほとんどないのに対して,参照しようとするときの労力がかなり増えるから。
その論文内で,同姓の別著者の文献を参照する場合は,姓・名をともに記述する。
6人以上の著者は,初出の場合でも,ほかの著書と区別がつくだけの最小の著者名(※)につづけ「ほか」とする。理由は,文字数があまりにも多いから。
同じ著者の文献は,出版年順に並記する。
異なる著者の文献は,第1著者名のあいうえお順に記述する。理由は,文献リストと同じ順番だから。
同じ著者,かつ同じ出版年のものは,出版年に続けてアルファベットをその論文内での登場順に記述する。「佐藤(2001a,2001b)」のように同時に登場する場合のアルファベットは,論題の50音順とする。
引用した場合は,必ず該当ページを記述する。
採録が決定しているが未だ発行されていないものは「印刷中」とする。
ただし,投稿中などで採録が決定していないものについては,原則として参照することはできない。理由は,採録が決定していないものは,査読や出版社の判断等,その文献の内容の意義を保証する著者以外による手続きを経ていないため,参照に足る質を備えているかどうかが不明だから。
訳書を参照した場合のページ数は,訳書のそれを記述する。
出版年は,「原典/訳書」で記述する。理由は,それぞれの出た時代背景が一目だから。訳書が後なのは,訳書の出版年の直後に訳書のページ数が続いて並んでいるほうが見やすいから。
「参考文献」などとせず,「文献」とのみ記述する。理由は,直接本文で言及した文献のみ(参考にした文献は含まない)記述するから。
著者名は,原則として全員表記し,それぞれ「,」(全角コンマ)で区切る。理由は「複数の著者」を参照。
著者が8人以上の場合は,最初の6人と最後の1人を以下の形式で記述する。
邦名以外の著者名は,原文がアルファベット表記の場合「スミス,C.A.」のように,ファミリーネームに続けてイニシャルを記述する。アルファベット以外の表記の場合「イ・ヨンスク」「孫文」のように,奥付表記のまま記載する。なおその際,姓と名とを空白で分かたない。
文献リストは,(邦訳文献も含め)この第1著者名の50音順に並べる。それに続けて和文以外の文献をアルファベット順に並べる。
論題に「」(カギカッコ)はつけない。理由は,つけなくてもそれが論題であることがわかるから,かつ,論題中に「」を含む場合それは『』となって実際の論題表記と異なってしまうから。
紀要類の誌名が『○○研究』のような一般的なもののために,出版母体となる組織がどこであるかわからない場合は,丸カッコ内にその組織名を記す。
取得元は,機関リポジトリ等のURLではなく,各ハンドルシステムの識別子を記述する。理由は,ページが移動しても恒久的に追跡できるから。
ハンドルシステムに登録されていない論文(個人のWEBサイトで公開されているものなど)は,その論文そのもの(PDFファイルなど)のURLではなく,その論文にアクセスできるページのURLを記述する。理由は,さもないと誰のどのサイトに掲載された論文かがわからないから。
編者について,奥付に「編・著」とあっても,「(編)」だけでよい。理由は,編者が何も書かないことはありえないから。
報告書全体の著者は,研究代表者名のみを記述する。
「日本学術振興会科学研究費補助金」は,単に「JSPS科研費」とし,続けて()内に8桁の課題番号を記述する。理由は『科研費ハンドブック』の謝辞の表示例(p. 21)に従ったから。
匿名記事は,記事タイトルを著者名として扱う。
著者の所属機関名は,以下の理由から,その研究をおこなった所属機関名を表示する。
論文等の研究発表において,所属機関名を表示するのは,発表者の身分(「修士課程」,や,「講師(非常勤)」など)を表示するためでは決してない。むしろ,身分の表示は,読み手・聞き手に研究内容とは関係のない何らかの先入観を与えがちである。研究における議論はすべて,その研究成果そのものについてのみされるもので,学生だからまだこのくらいで良いだろう,とか,教授だから何か深い知見が背景にあるのだろう,といった身分から導かれる予見や憶測とは無縁のものである。
所属機関名を表示する理由は,その研究業績の実現は,発表者によってだけではなく,発表者のその研究遂行を可能にした所属機関によってでもあるからである。つまり,所属機関名の表示は,「この研究はこの研究機関の業績である」ことを表示するものである。
したがって,所属機関名としては,現在の所属機関ではなく,その研究をおこなった機関名を書く(連絡先等の混乱を防ぐため,現在の所属も注として併記することはあるが,あくまでも所属として表示するのは,その研究をおこなった機関名である)。
また,所属機関名の表示は,副次的には,その研究を実現した環境の表示にもなる。これによって,どんな国の,どんな種類の組織の,どんな気候の,などの環境下で,その研究が実現したのかを読者に知らせることができる。この点を踏まえると,一切の所属機関に属さずに行った研究の場合は,所属機関に代わって,その研究をおこなった住所(市町村レベル程度)を書くこととなろう。
著者への問い合わせ先(メールアドレスなど)は,その研究についての質問等を読者から受け付けるために記述する。したがって,複数の著者による場合でも,連絡先として代表する1つを記述すればよい。
ワープロソフトの普及によって,あたかも印刷物であるかのような原稿が比較的簡単に作成可能になった。しかし,ワープロによって設定された書式のほとんどは,出版される版面には直接反映されない。ワープロで出版された版面を模して丁寧に書式を設定したとしても,実際の版面には役に立てられず,むしろ印刷トラブルの元となる。したがって,ワープロで原稿を入稿する際は,最終的な版面イメージではなく,もっぱら原稿としての読みやすさのみに留意してシンプルに作成することが望ましい。
原稿としての読みやすさは,主に,(1)文字の大きさと種類,(2)ページあたりの行数と1行あたりの文字数,の2点から構成される。多くの執筆要領等は,これらを規定しており,つまり,読みやすい原稿の執筆を著者に求めている。執筆要領等が定めるこの2点に従えば,原稿執筆の書式設定は完了し,これら以外に留意する必要はない(つまり,複数のフォントの使用,網掛け,下線,傍点,段組,罫,囲み,着色,太字,等,ワープロの機能によって実現する,さまざまな書式は,一切使用する必要はないし,すべきではない)。
図や表は,本当に必要かよく見極める(印刷コストが非常に高いから)。
図や表は,通し番号をそれぞれ振り,本文では以下のように言及する。
決して,「次の表」「右の図」など,位置を指定してはならない。図表の位置はページ割に応じて任意に変更されるから。
図や表は,(投稿規定が許すなら)1つの図や表をそれぞれ1ページとして,別ページ,または別ファイルに,記述するのが望ましい。
なお,本文で言及されない図や表は,掲載されない。
表は,本本を読まなくても,それ自体ですべての意味が理解できるだけのものでなければならない。略語等があるばあいは,表注として,表下部で説明する。
表の罫線は,原則として横罫線のみ使用し,縦罫線は使用しない。
図は,それ自体が著作性が高いので,単独の著作物としてみなされるので,たとえ図を単独で引用されても,表現したいことがすべて表現されているように,図のタイトルには,説明をできるだけ詳しく書き込むことが望まれる。
図は,原則としてカメラレディ原稿として扱われる(入稿原稿のまま印刷される)ので,以下に留意する。
図のタイトルは図の下にあることに注意。