[2025-01-10] Revue Langue,Culture et Education. n.890 ###################################################################### [ 週刊 ] ル ビ ュ 言 語 文 化 教 育(RLCE) ─890号─ ###################################################################### ■ 890号:もくじ ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ --◆◇研究所より◇◆-------------------------------------------------- 伊那谷の老婆と複言語複文化主義―新年1月のシンポジウムから  細川英雄 【参加者募集:明日】名古屋外国語大学ワールドリベラルアーツセンターシン   ポジウム「複言語複文化主義と共生社会─ことばの教育のめざすもの」 --◆◇お知らせ◇◆---------------------------------------------------- 【聴取無料】Voicy「自分のことばをつくる」 ─ #105 AI実践元年へーこ   れからのことばの教育,ほか(#1〜#105) 【動画紹介】「CEFRと言語教育/日本語教育の在り方」,ほか 【記録公開】ケルン日本文化会館「共に生きるためのことばの活動とは何か」,   ほか。 【執筆しました】『日本語ジャーナル』連載「日本語教育のスタートライン」   ほか,書評募集しています。 --◆◇八ヶ岳南麓より◇◆---------------------------------------------- ●参加御礼:ヒルマ.アフ.クリントの映画会、大好評でした。,ほか --◆◇寄贈図書・論文◇◆---------------------------------------------- 三代純平・佐藤正則編『日本語学校物語─開拓者たちのライフストーリー』ほか ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 研究所より ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ 伊那谷の老婆と複言語複文化主義―新年1月のシンポジウムから                              細川 英雄 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 新年1月11日(土)に名古屋外国語大学ワールドリベラルアーツセンターにて 「複言語複文化主義と共生社会―ことばの教育のめざすもの」というタイトル で、シンポジウムが開催される。 このシンポジウムは、名古屋外国語大学学長で、ロシア文学者である亀山郁夫 さんが、『複数の言語で生きて死ぬ』(山本冴里編、くろしお出版2022)を読 んで、複言語・複文化主義と共生社会について深く考えるきっかけになったと いうことで、編者の山本冴里さん(山口大学)を招聘し、終章を担当した私も 参加することになった。 シンポでは、終章に登場する伊那谷の老婆について、その後、いろいろ思い出 したこともあり、この老婆をめぐるエピソードの意味について考えてみたいと 思っている。 本の中でも書いたが、この老婆のことを思い出したのは、フランスの哲学者バ ルバラ・カッサンの京都講演の折のことで、たまたま指定討論者としてその講 演に参加しつつ、哲学用語辞典をさまざまな言語でつくるというカッサンの趣 旨には強く賛同しつつも、古代ギリシャ人がギリシャ語を話さない話者を「バ ルバロイ」(聞きづらい言語を話す人の意)と軽蔑的に呼んで差別した偏見を 超えて、他民族への関心を複言語という形で受容することが必要という彼女の 発言に接して、不意に思い出したのが、伊那谷の老婆のことだった。 ひとつは、「古代ギリシャ人は…」という集団類型化の問題で、古代ギリシャ 人がすべてそのように考えていたわけではないだろうという疑問があった。そ の時代、その社会には、あのソクラテスもいたし、その弟子のプラトンもいた。 そうした人たちをも、古代ギリシャ人としてひとまとめにして論じていいもの なのか。 たしかに、多くの人に他民族を「バルバロイ」と呼ぶ習慣があったかもしれな いが、そのことに気づいていた人もいたに違いない。 では、そのように考える、いわば賢者たちは、複数の言語を自在に操ることが できたのだろうか。 もちろん、中には、そういう人もいただろうけれど、すべての賢者が同じよう に異言語に長けていたとは考えられない。 異言語は使うことができなくても、他民族を「バルバロイ」と呼ばずに、対等 な関係で共生しようとした人たちもいたはずだ。 こんなことを考えていたときに思い出したのが、伊那谷の老婆のことだったの だ。 本書の該当部分を引用しよう。 > 伊那谷の老婆のエビソードというのは、信州伊那谷に暮らす老婆がいて、そ > の老婆は、外国語を勉強したこともなければ、海外はおろか生涯、自分の小 > さな村を1歩も出ずにいる。いくら山の中だとはいえ、このようにどこにも > 行かないというのはちょっと信じがたいことではある。しかし、そこには常 > に数人の外国人がおとずれ、一か月―一か月と滞在していく。炊事や風呂は > すべて薪炊きで、老婆はほぽ一日中かまどの前に座って火の番をしている。 > そのかまどの横には、彼女の若い頃に読んだという岩波文庫が山積みになっ > ていて、火の勢いが弱くなると、そのページを破っては火にくべている。日 > が暮れると、村の老若男女が彼女の家にいろいろな食べ物をもってぽつぼつ > と集まってくる。長期滞在の外国人たちも一緒になって、焚火を囲んで好き > 勝手に話し込んでいる。(『複数の言語で生きて死ぬ』pp. 187 - 188) 複言語主義とは、個人の中に複数の言語が内在することを指すが、これは単に 複数の言語を知っているとか、あるいは複数の言語の使用が可能だとかという ことだけではない。 個人が影響受ける言語というのは、いわゆる名称のある言語だけにとどまらず、 一人ひとりの中に入り込んでくるさまざまなことばを引き受けて、私たちは 「自分のことば」を成立させている。「自分のことば」は複数のことばの総体 であるということもできるだろう。 このように考えると、複文化も国や民族の文化を受けるだけではなく、さまざ まな複数の有形無形の文化の影響を受けて、私たちは自分の文化というべきも のを成立させていることがわかる。「個の文化」(細川2002)とでも言うべき ものだろうか。 大切なことは、こうした「自分のことば」「個の文化」をどのように自覚化す るかということではないだろうか。 コミュニケーションとは私のことばと文化の交流、つまりインターカルチュラ ルな状況こそ重要なのだ。この個の文化の自覚化、意識化により他者との共通 点と差異が明確になり、話題の背景にあるそれぞれのテーマが浮かび上がって くる。 個人一人一人がこの個の文化を自覚することによって、初めて中身のある対話 がようやく始まるともいえる。 集団類型化は、こうしたこの文化を見えなくするものだ。個の文化が見えなく なると、他者を個人として捉えにくく、集団と集団では基本的に対話は成立し ない。 これが市民性形成の第一歩であり、同時に社会的言語活動主体の成立でもある。 そうした複言語的複文化的市民によって民主主義は成立するのではないか。 民主主義が成立することによって、平和と秩序が尊重される世界となり得るわ けだろう。 つまり、社会的結束のためには、民主主義の確立が必要。民主主義の確立のた めには、民主的市民形成が不可欠で、この民主的市民形成には、個の文化の自 覚化ということが必要ということになる。 個の文化の自覚化ということは、すなわち社会的行為主体としての社会的言語 活動主体、複言語複文化の個人のもとで成立することになる。このことによっ てさまざまな個人と個人の間の対話が成立するということにもなるからである。 新年1月11日(土)のシンポジウムでは、こんなことを話そうかと考えている。 ━【参加者募集:1月11日】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 名古屋外国語大学ワールドリベラルアーツセンター・シンポジウム 「複言語複文化主義と共生社会─ことばの教育のめざすもの」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ > この社会には、言語によるコミュニケーションに何の不自由も感じない人も > いれば、その高さ深さに日々格闘している人もいる。ある人にとっては当た > り前の状況が、別の人にとってはきわめて特別なこととなる (山本冴里[編]『複数の言語で生きて死ぬ』より) このシンポジウムでは、欧州評議会が「ヨーロッパ言語共通参照枠CEFR」 (2001年)で提唱した複言語複文化主義という概念をベースに、3名のパネリ ストが「ことばの教育のめざすもの」について討論を展開します。 複数の言語と文化の交錯する共生社会におけることばの教育のあり方について、 一緒に考えてみませんか。 ●パネリスト:亀山郁夫(名古屋外国語大学学長),山本冴里(山口大学),        細川英雄 ●日時:2025年1月11日(土)14:00〜16:30 ●会場:名古屋外国語大学名駅キャンパス 多目的ラボ ●定員:80名(対面のみ) 事前申し込み(オンラインフォーム)が必要です。詳しくは, https://www.nufs.ac.jp/library_facilities/wla-center/2024/0111/ をご確認ください。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●新年のメルマガをお送りします。 年末年始は、横浜から娘と孫が来ましたが、インフルエンザのようなものに見 舞われて、二人ともダウン。 妻も感染したらしく絶不調。僕以外は、みな寝正月でした。 それでも、新しい年は始まります。 ことしは、ぜひ健康第一で行きたいものです。 みなさま、どうぞご自愛ください。                (ほ) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━■ ご意見・投稿お待ちしています ■━━━━━━━━━━━━━━━━ みなさまの,ご意見・ご感想をお寄せ下さい。関係の方々の著作・論文につい ても掲載します。 最近,いい書評を掲載してくれるところが減りました。本を評するということ の意味がだんだん薄れてきたように思います。 このメルマガでは,まず皆さんの仕事を紹介したいと思います。それから,自 薦・他薦による書評を掲載します。そして,その書評をめぐって,充実したや り取りがメルマガ上でできればおもしろいと考えています。 1000〜1200字程度で紹介をお願いします。論文の場合は抜き刷を,著 書の場合は1冊を贈呈いただけるとうれしいです。なお,編集部でコメント等 をつけることもあります。 みなさんの仕事を応援する場をメルマガ上に形成します。投稿いただけるかた は,言語文化教育研究所(info@gbki.org)までメールでお送りください。 【自著を語る】出版を機にご自身の本等をご紹介ください。書評のきっかけに  もなります。 【この本がおもしろい】コーナーは,新刊に限定するものではありません。古  典・名著など,知られざる書籍をそれぞれの自分のことばでご紹介ください。 【私から一言】メルマガの記事に限らず,日々の実践の中で感じたことなど,  随時お寄せください。ご相談の上,順次掲載していきます。 ●宛先: info@gbki.org 言語文化教育研究所 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ お知らせ ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ ━【聴取無料】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ Voicy「自分のことばをつくる」 #105 AI実践元年へーこれからのことばの教育,ほか(#1〜#105) https://voicy.jp/channel/3666/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ いよいよ100回、「自分のことば」をつくることの意味をさまざまな角度か ら検証します。 「文化は教えられるか」(#077〜079) 「○○と私」プロジェクトの醍醐味(#080〜082) 「村上春樹と私」(#083〜087) 「CEFRと私」(#088〜092) 「対話型実践の歴史と現在」(#093〜095) 「総合活動型日本語教育と私」(#096〜105) ぜひ「いいね」やフォローをお願いします。 https://voicy.jp/channel/3666/ あわせて、ご意見、ご感想、ご質問をお待ちしています。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━【動画紹介】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●日本語教育学会社会啓発委員会(編)『日本語教育の参照枠とCEFR』第3回 「CEFRと言語教育/日本語教育の在り方」 https://www.nkg.or.jp/news/2023/2023_03_20-1.html 対談:細川英雄氏(言語文化教育研究所/早稲田大学名誉教授),山本冴里氏   (社会啓発委員/山口大学) 聞き手:稲垣みどり氏(社会啓発委員) 前編:https://youtu.be/cKRhZtlTH1I 後編:https://youtu.be/6xZRFhGpmSA CEFRの考え方とことばの教育のあり方をめぐって、久しぶりに山本冴里さんと の親子対談(?)です。 ●今ふりかえる,京都大学国際研究集会シンポジウム 2019年『CEFRの理念と現実』:細川英雄「複言語主義をどう解釈するか─欧州   評議会の理念と日本社会」 https://youtu.be/amGPLwhbj2w 2013年『真のグローバル人材育成を目指して─その理念と実践』:細川英雄   「どのような言語教育によるどのような異文化間能力養成が可能なのか」   https://youtu.be/nA35j3DrdNw 2009年『外国語教育の文脈化』:細川英雄「CEFRの理念と日本語教育における   文脈化の意味─学習と教育を結ぶ」 https://youtu.be/t1faSaQ-8sQ こうした経緯を振り返ると、1995年のフランス交換研究時代の記憶が走馬灯の ようによみがえってくる。CEFRの議論とはどのようなものなのか、その目的と は何か。この問いを忘れて方法ばかりに走る安易さというか愚かさこそ、欧州 評議会が最も忌諱することなのではないか。 ●少しずつ異なる観点の話なのですが,それぞれ対話とは何か,教育とは何か という視点でバイオグラフィ的に話しています。 ・荻野雅由さん(カンタベリー大学)の『転機,支え,幸せ』から  https://www.facebook.com/hideo.hosokawa2/posts/10223973117226384 ・言語文化教育研究学会:言語文化教育アーカイブズ「日本語教育とは何か─  熟練教師の語る教育哲学」 http://alce.jp/archive/jpv.html ・愛知での地域の対話型活動への応援動画(シュマン・チャンネル)です。  1.https://www.youtube.com/watch?v=_gR9qPQkT3g  2.https://www.youtube.com/watch?v=K-sza-ynFPc&t=6s ●上記の動画とも関連して,加藤早苗さん(インターカルト日本語学校)とリ チャ・オーリさん(千葉大学)が,それぞれ話題にしてくださっています。 加藤さんは,2004年に始まった「実践研究フォーラム」(日本語教育学会)の 委員会のことを,リチャさんは,雑誌「リテラシーズ」のことを語ってくださっ ています。人と人の出会いとつながり,そして対話の意味を考えさせられます。 ・「こんにちは!加藤早苗です。」well-being-細川先生-  https://www.incul.com/blog/kato/2021/02/24/19463/ ・Vol 18 オーリ リチャさん ことばの教育にかかわる人へのインタビュー企  画『転機・支え・幸せ』 https://youtu.be/01zd-pxnn_U ●「対話とおしゃべり」シュマン・デュ・ボヌール”本の庭”企画 自著のシェアタイム『自分の〈ことば〉をつくる』 https://youtu.be/FK978bOTguE 他者と共にどう生きるか。「よく生きる」ための対話の活動について話してい ます。ご意見,ご感想もお待ちしています。どうぞよろしく。 ●田中祐輔さん(青山学院大学)作成・編集の『日本語教育100年史』に掲載 していただきました。これは,戦後(1945〜2045)の日本語教育を築いた方々 の記事と映像をアーカイブ化することを目標とし,実践や論文書籍ではアプロー チできない世界,人の人生や人と人との交わりを記録したいと考えて作成され ているものです(田中氏談)。 大きな構想の下,丹念な取材を重ねた,すばらしい映像と記録です。 https://oralhistory-jle.com/archive/658/ 映像は記事の上部より再生できますが,映像単体の場合は,以下のURLとな ります。 https://youtu.be/_oFsH7FLWII ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━【記録公開】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆2018年4月28日:ケルン日本文化会館日本語教師研修会「共に生きるため のことばの活動とは」 多様な人たちが共に生きる社会において,教室という場はどのような役割を持 つのでしょうか。また,そこで私たち教師は何を実践すべきなのでしょうか。 私たちが考える「教室」「教師」「学習者」というものを振り返り,そして捉 え直す。大勢のご参加と活発な議論を感謝します。当日の記録を公開します。 ご意見,ご感想をお待ちします。(ほ) http://gbki.org/dat/koln18.pdf ◆2016年秋:ヴェネツィア「カ・フォスカリ」大学「日本語ゼロビギナーを対 象としたアクションリサーチゼロ」 日本語ゼロビギナーの学習者を対象とした全16回の活動(プロジェクトリーダー :マルチェッラ・マリオッティさん〈ヴェネツィア「カ・フォスカリ」大学〉, 市嶋典子さん〈秋田大学〉,スーパーバイザー:細川英雄)の記録と,その作 品集が公開されています(市嶋典子さんのサイト)。 http://ichishima.thyme.jp/report1.html 〈関連〉2018年9月19日ベネツィア「カ・フォスカリ大学」での講演「対話 をするために必要なもの─ワークショップゼロの理論的な背景」の動画記録 https://youtu.be/Rbhs7xUQ5YY 魂を揺さぶられた,という感想を数人の方からいただき,普段からの私の思い をそれなりに伝えることができたこと,本当にうれしく思います。私自身にとっ ても,とても刺激的なやりとりでありました。改めて御礼申し上げるとともに, 今後の議論につなげることをお約束したいと思います。       (ほ) ●上記の活動がそのまま本になりました。 https://amzn.to/39JM1Mg ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━【執筆しました:書評募集】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●『日本語ジャーナル』の「日本語教育のスタートライン」、今回で一応、一 区切りです。 ・連載:日本語教育のスタートライン  1.「ことばを教える」とはどういうことか  https://nj.alc-nihongo.jp/entry/20231120-start  2.ことばを教える教師の役割とは何か  https://nj.alc-nihongo.jp/entry/20231210-start  3. ゼロビギナーとの対話を考えることは、ことばの活動の原点  https://nj.alc-nihongo.jp/entry/20240131-start3 ・前回対談「CEFRの本質から「日本語教育の参照枠」への向き合い方を考える」  前編 https://nj.alc-nihongo.jp/entry/20230911-cefr  後編 https://nj.alc-nihongo.jp/entry/20230926-cefr ことばを教えるとは何か、ことばは教えられるのか、日本語教育以前の基本的 な問題について深江さんと対談してます。 ぜひご意見、ご感想をお寄せください。 ●細川英雄「国語から日本語へ、そしてことばの教育へ─教育バイオグラフィ の試み」(『定年後の学問の愉しみ』カンナ社編、青灯社 2023) ・Amazon.co.jpにジャンプ: https://amzn.to/3qJmonm ●『対話することばの市民 ─ CEFRの思想から言語教育の未来へ』 細川英雄 編著 3,960円 2023年4月 ココ出版 刊 ・Amazon.co.jpにジャンプ: https://amzn.to/3KEakLR 前著『「ことばの市民」になる─言語文化教育学の思想と実践』(ココ出版, 2012)からちょうど10年目にあたる年に新しい論文集を編むことになりました。 タイトルを『対話することばの市民』とし、フランスを中心とする言語教育の キーパーソンと文字通りの「対話」を試みることで、CEFRの思想から言語教育 の未来を展望しようというもくろみです。 欧州評議会による「ヨーロッパ言語共通参照枠」(CEFR)前夜ともいうべき 1995年から96年にかけてのパリ滞在経験が、20年前の『日本語教育は何をめざ すか』(明石書店,2002)を生み、それを引きつぐ形で上梓したのが10年前の 『「ことばの市民」になる』でした。 それからさらに10年、ことばと文化の統合、言語文化教育の実践研究、市民性 形成のためのことばの教育、と少しずつ視野を広げつつ、やっとたどり着いた 地点で待っていたものは、「ことばの活動は何のためにあるのか」という果て しのない問いでした。 早期退職後の10年の歩みをご覧いただければ幸いです。 読者の皆様のなかで、関係する紀要・雑誌等に書評・紹介等を書いてくださる 場合、お知らせいただければ一部お送りします。 下記までお知らせください。 info@gbki.org ●細川英雄「私はなぜ教育の道を志したか」(「教育展望」2022年11月号) http://www.chou-ken.or.jp/main/2022/11/111448-9304.html ●細川英雄「ことばの教育は何をめざすかー共生社会のためのwell-being」 稲垣みどり・細川英雄・金泰明・杉本篤史編『共生社会のためのことばの教育 ─自由・幸福・対話・市民性』明石書店  Amazon.co.jpにジャンプ https://amzn.to/3g5cVBm ●『「活動型」日本語クラスの実践─教える・教わる関係からの解放』(細川  英雄(監修),マルチェッラ・マリオッティ,市嶋典子(著),スリーエー  ネットワーク:Amazon.co.jp https://amzn.to/39JM1Mg) ●細川英雄「複数の言語で生き死にするということ─人間性の回復をめざして」 山本冴里(編)『複数の言語で生きて死ぬ』(くろしお出版)  Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/ys.html ●ALCEのメールマガジン「トガル」に「自著を語る」が掲載されました。  https://www.togaru.online/hosokawa ●細川英雄「社会的行為主体を実現するアクション・アプローチの意味─CEFR  の複言語主義解釈から言語教育実践の方向性へ」(第7章)西山教行,大木 充(編)『CEFRの理念と現実 理念編─言語政策からの考察』 ・Amazon.co.jpにジャンプ: http://gbki.org/ri.html ●細川英雄『私はいかにして表現活動主義者となったか──思考と表現の往還  から学習者主体へ』西口光一編『思考と言語の実践活動へ──日本語教育に  おける表現活動の意義と可能性』ココ出版. ●細川英雄「対話の場の形成と発展──『リテラシーズ』のバイオグラフィか  らの知見」『リテラシーズ』23巻(くろしお出版,2020年12月) ●細川英雄「自分にも相手にも「なぜ」という対話を」『民主青年新聞』2020  年4月13日号(12面) ●細川英雄「ことばの活動によるコミュニケーションとその教育の意味─欧州  評議会における言語教育政策観の推移から」『コミュニケーションとは何か  ─ポスト・コミュニカティブ・アプローチ(リテラシーズ叢書)』佐藤慎司  (編集)くろしお出版.  Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/pst.html ●細川英雄「日本社会と異文化間教育のあるべき姿」第3章  西山教行,大木充(編)『グローバル化のなかの異文化間教育』(明石書店)  2019年3月刊  Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/glb.html ●細川英雄「学習者主体からことばの市民へ─ポリティクスとしての言語文化  教育の歴史と革新」『言語文化教育研究』第15巻:特集「言語文化教育のポ  リティクス」 http://alce.jp/journal/vol15.html 畏友ピエール・マルティネーズによる「外国語の政策──新しい時代のための マニュアル」(高橋希実訳)フランス語版も掲載されています。 ●細川英雄,太田裕子(著)『キャリアデザインのための自己表現──過去・  現在・未来を結ぶバイオグラフィ』東京図書より2017年9月刊 ・Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/car.html ことばの花ひらくとき──自分のことばで自分を表現するとき,見えてくるの は自分の未来──本書は,自分の「これまで」を振り返り,「これから」を考 えるための指標になるような事例と,ことばによる自己表現の方法について, さまざまな立場に即して提案します。作文活動から,仲間どうしのインタビュー から,ライフストーリーの聞き取り,地域コミュニティ,企業研修……。 10年後,20年後の自分の人生はどのようなものだろうか──。自分の人生をデ ザインするのは,あなた自身にほかなりません。 また,テキストとして採用予定の方には,見本をお送りします(無料)。 大学・短大の文章表現クラスや日本語学校の大学院クラス・就職クラス等を担 当される方,お待ちしています。 ●(リテラシーズ叢書6)『市民性形成とことばの教育──母語・第二言語・  外国語を超えて』くろしお出版. ・細川英雄,尾辻恵美,マルチェッラ・マリオッティ(編) ・Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/lit6.html ことばの教育には,社会的行為主体として自覚的に他者とかかわる「市民」と しての意識が不可欠である。そこには,母語,第二言語,外国語という境界は ない。人がことばを使って社会の中で生きていくことの意味を追求し,具体的 な活動実践とどのように結びついているかを考える。 ●[リテラシーズ叢書5]『日本語教育学としてのライフストーリー─語りを  聞き,書くということ』 ・三代純平(編),くろしお出版,定価:3,240円 ・Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/lit5.html ●[リテラシーズ叢書4]『異文化間教育とは何か─グローバル人材育成のた  めに』 ・西山教行,細川英雄,大木充(編),くろしお出版,定価:2,592円 ・Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/lit4.html ●[増補・改訂]『研究計画書デザイン──大学院入試から修士論文完成まで』 ・細川英雄(著),東京図書.〈2015年度日本図書館協会選定図書〉 ・Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/des1.html 実践と研究をつなぐ指針として,コラムを大幅に強化。大学院受験にとどまら ず,研究計画指導に広く適応し,実践と研究を結ぶ本として増補・改訂。 増補・改訂後,早くも重版です。 ●【電子書籍版・新発売】Kindle版『初級からはじまる「活動型クラス」──  ことばの学びは学習者がつくる:『みんなの日本語』を使った教科書・活動  型クラスを例に』細川英雄,武一美(編),金龍男,坂田麗子,村上まさみ,  森元桂子(著) ・Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/ki.html ●『対話をデザインする──伝わるとはどういうことか』(細川英雄・著,ち くま新書)2019年6月5日 ・Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/tw.html ・アマゾンに興味深いコメントが出ました。まだ数は少ないですが,深く読み 込んでくださる方がいて感謝です。 https://amazon.co.jp/gp/customer-reviews/R7QMRU43DDKM5/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ─〈紹介・書評募集〉───────────────────────── 以上の書籍につき,紹介・書評を執筆してくださる方を募集します。 できれば,紹介・書評等を掲載できる紀要・雑誌・新聞等をそれぞれお探しの 上,研究所までご連絡ください。本誌1冊をお送りします。これから投稿とい うことでもかまいません。該当メディアに心あたりがないという場合には,当 メルマガでの掲載も可能です。あわせてご相談いただければ幸いです。大勢の 方に読んでいただければ,本当にうれしいです。 ご連絡は,info@gbki.orgまで。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 八ヶ岳南麓より ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ Chemin du bonheur(シュマン・デュ・ボヌール:幸福の道) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ヒルマ.アフ.クリントの映画会、大好評でした。 https://www.facebook.com/chemindubonheurhokuto/ 紙芝居&手話の動画の【シュマンチャンネル】配信もよろしく。 『きみにも,ぽっ』https://youtu.be/8QTReritnI0 『おじいちゃんのまきストーブ』https://youtu.be/NKSn5mFSFfs ●シュマンデュボヌールは,創造的な芸術文化のコミュニティ空間としてギャ ラリー等を開放しています。 https://chemindubonheurhokuto.weebly.com/about-chemin-du-bonheur.html お申し込みその他,お問い合わせは下記まで。 info@gbki.org ●『きみにも,ぽっ。』 絵: 本杉琉 文: 沢森りさ 発行:Chemin du Bonheur 自然と動物と人のとけあった世界の中で,ふたばは芽をふきます。それぞれの ふたばから,どんな楽しみが生まれてくるのでしょうか。本杉琉の絵と沢森り さの文が描き出す不思議な世界,きみのは,なあに?子どもからお年寄りまで, 誕生日やお祝いのプレゼントに最適。(Amazonによる紹介より) ・増補改訂版,発行しました。ご希望の方,ご連絡ください。 ●絵本『おじいちゃんのまきストーブ』 ・Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/ma.html 八ヶ岳の造形作家・本杉琉さんが初めての本格的な絵本『おじいちゃんのまき ストーブ』(絵:もとすぎりゆう,文:さわもりりさ,発行:文屋)は,今秋 刊行されました。 森に生きる日々,薪ストーブのある暮らし,世代と血縁を超えた家族のありよ う…人生の不思議さと豊かさ,美しい日常を礼賛する物語が,国籍を超えた本 杉さんの絵筆で描かれます。 この絵本制作のためのクラウド・ファンディングでは,多くの方々からご賛同 をいただき,全国の児童養護施設へ600冊を送ることができました。 https://camp-fire.jp/projects/view/161866 改めてみなさまのご協力に感謝します。 ・増刷,決まりました。益々のご支援をお願いします。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ オルタナティブスクール 八ヶ岳まあるい学校 http://yatsugatakemaaruigakkou.hatenadiary.jp ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 新たな時代を生きる子どもたちのために。山梨県北杜市小淵沢町 ●Facebookページ: http://fb.com/1631787117104481 ★言語文化教育研究所は,「オルタナティブスクール 八ヶ岳まあるい学校」 を応援しています。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ナチュラルレストラン せらひうむ http://www.oizumi.ne.jp/~oizumi/home/seraphim/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ナテュラル・レストラン,自然食,野菜料理,自家焙煎コーヒーです。博識の マスターと話していると,現実世界を忘れます。「せらひうむ」は,天使の最 上級階の名称,このお店には天使がいます。            (ほ) ●営業時間:11:00〜20:00(土・日曜のみ営業,夜は予約のみ) ●北杜市大泉町西井出8240−5523 ●電話:0551−38−0435 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 金田一春彦記念図書館(山梨県北杜市) http://www.lib.city-hokuto.ed.jp/kindaichi/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 金田一春彦記念図書館の「北杜ゆかりの著書コーナー」に,言語文化教育学関 係の本がそろっています。どうぞお手にとってご覧ください。    (ほ) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ON READING/読む時間 #001「愉しい孤独」 http://beekmagazine.com/category/column/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 八ヶ岳でmountainbookcaseという移動書店をやっている石垣純子さんが,素敵 なエッセイを書いています。 https://www.facebook.com/mountainbookcase/?pnref=about.overview 移動書店というのもユニークな活動ですが,第1回の「愉しい孤独」,なかな か味のある文章です。(ほ) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 書評募集:寄贈いただいた論文・図書など ■□■□■□■□■□■□■ ●『日本語学校物語─開拓者たちのライフストーリー』(三代純平・佐藤正則  編,ココ出版,2024年12月1日刊)  https://cocopb.com/books/978-4-86676-075-9/ ●『辺境のラッパーたち ─ 立ち上がる「声の民族誌」』(島村一平編,佐藤  剛裕ほか著,青土社、2024年4月)  http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=3935 ●『一歩進んだ日本語教育概論 ─ 実践と研究のダイアローグ』(西口光一監  修、神吉宇一,嶋津百代,森本郁代,山野上隆史,義永美央子編著、大阪大  学出版会、2024年3月)  https://www.osaka-up.or.jp/book.php?isbn=978-4-87259-801-8 ●『よい教育研究とは何か ─ 流行と正統への批判的考察』(ガート・ビース  タ著、亘理陽一・神吉宇一・川村拓也・南浦涼介訳、明石書店、2024年5月)  https://www.akashi.co.jp/book/b647624.html ●『INTEGRER L'INTELLIGENCE ARTIFICIELLE A L'UNIVERSITE』(Pierre  Martinez著,L'Harmattan,avril 2024)https://tinyurl.com/t3euhuw2 ●『日本語 巡り合い 1』(佐々木瑞枝監修、「巡り合い」編集委員会、ひ  つじ書房、2024年3月)  https://www.hituzi.co.jp/hituzibooks/ISBN978-4-8234-1216-5.htm ●村田晶子・神吉宇一(編著)『日本語学習は本当に必要かー多様な現場の葛 藤とことばの教育』明石書店.https://www.akashi.co.jp/smp/book/b641381.html ●徳井厚子著『多文化共生社会のキーパーソンーバイリンガル相談員によるコ ミュニケーション支援』ココ出版.https://cocopb.com/books/978-4-86676-073-5/ ●瀬尾匡輝・瀬尾悠希子編著『誰も教えてくれない日本語教育の現場』(ココ  出版) https://cocopb.com/books/978-4-86676-068-1/ ●名嶋義直・野呂香代子・三輪聖著『日本語×民主的シティズンシップ』(凡 人社) https://www.bonjinsha.com/goods/detail?id=14258&pt=3 ●福村真紀子『結婚移住女性のエスノグラフィー─地域日本語教育の新しい在  り方』早稲田大学エウプラクシス叢書043  https://www.waseda-up.co.jp/cat664/post-862.html ●大澤真美『生成しゆく表現としてのわたし(我他史)』(大澤真美発行),  『ことばの焚き火』(サンクチュアリ出版)  https://amazon.co.jp/dp/4801498612 ●佐藤慎司,神吉宇一,奥野由紀子,三輪聖編著『ことばの教育と平和─争い  ・隔たり・不公正を乗り越えるための理論と実践』(明石書店刊)  Amazon.co.jpにジャンプ: https://amzn.to/466HBrx 1990年代から起こった言語と社会の関係の見直しについて真正面から取り組ん だ好著。今、私たちはどのようなコミュニティや社会の未来を創造しうるのか という問いを発する本書から、ことばの教育と平和の構想をようやく展望する ことができる。『共生社会とことばの教育─自由・公覆・対話・市民性』(明 石書店2022年10月)につづく問題意識である。 ●石黒圭『コミュ力は「副詞」で決まる』(光文社新書)  おそらく殺人的な多忙の中、接続詞につづいて、今度は副詞。その精力的な  仕事に敬意を表します。  Amazon.co.jpにジャンプ: https://amzn.to/3pTfvj2 ●渡辺憲司著『江戸の岡場所─非合法〈隠売女〉の世界』(星海社・講談社)  Amazon.co.jpにジャンプ: https://amzn.to/3nMbufn ●田中祐輔編著『日本語で考えたくなる科学の問い─心と身体篇』(「調べる  ・考える・伝える」ための探究・活動型日本語教科書)  いろいろな工夫を凝らした、新しいタイプの日本語教材です。日本語を学ぶ  人だけでなく、高校生や大学生にも使えるものだと思います。「探究・活動  型」というのがうれしいですね。  Amazon.co.jpにジャンプ: https://amzn.to/3DcDRI3 ●境一三ほか著(2022)『外国語教育を変えるために』(三修社)  Amazon.co.jpにジャンプ: https://amzn.to/3H9Mgxp ●清水茂『カイエ・アンティーム=Cahier intime ─ 心の軌跡』土曜美術社  出版販売より2022年11月11日刊 ●松田真希子,中井精一,坂本光代(編)『「日系」をめぐることばと文化─  移動する人の創造性と多様性』くろしお出版より2022年10月刊  Amazon.co.jpにジャンプ: https://amzn.to/3ffRpKi ●多田孝志,他『見聞のまねび,耳見の学び─いま・未来を創る教育者へおく  る伝薪録』(三恵社)  Amazon.co.jpにジャンプ: https://amzn.to/3OBte4I ●異文化間教育学会 編著(2022)『異文化間教育事典』明石書店  Amazon.co.jpにジャンプ: https://amzn.to/39MvUxO 異文化間教育に関わる多くの術語・用語を学会員総出の執筆でまとめ上げたも の。私自身は,80年代後半に一度,この学会に入会したものの,interculture の概念を「異文化間」と訳すことに疑問を持ち始めたことで,その後退会,そ のままになっている。この訳語への疑念については,バイラム著細川監修『相 互文化的能力を育む外国語教育─グローバル時代の市民性形成をめざして』 (大修館書店,2015)に書いた。  Amazon.co.jpにジャンプ: https://amzn.to/3bpGVpv とはいえ,intercultureにかかわる,これだけの多くの概念,用語,述語を解 説するということは並大抵の仕事ではない。学会の尽力に敬意を表するととも に,今後の発展を期待したい。(ほ) ●「早稲田大学日本語教育学」32号に『自分の〈ことば〉をつくる』の書評を 古賀和恵さん(早稲田大学日本語教育研究センター)が執筆してくださった。 http://hdl.handle.net/2065/00088704 「私自身は,「自分のことば」が聴けているかという問いを突き付けられた。 それは私のことばを含め,「自分のことば」が響きあう場所が築けているかと いう問いでもある。」(p.83)とあるように,本書の問いを正面から受け止め てくださったこと,大変光栄である。かつて「教室の社会化」をめざして大学 院の研究室が総合活動型の実践を提案する中で,この概念を批判的に継承し, 教室を社会にひらくための「イベント・プロジェクト」という実践を展開した のは,他ならぬ古賀さんである。ますますの実践研究を期待したい。 ●『言語の標準化を考える─日中英独仏「対照言語史」の試み』(高田博行・  田中牧郎・堀田隆一編著 大修館書店)  田中克彦「第11章 漢文とヨーロッパ語のはざまで」  Amazon.co.jp: https://amzn.to/3PGuPYx 田中克彦さんとはずいぶん前に国語教育関係のシンポジウムでご一緒したこと を書いたが,私のことも覚えていてくださっていたようで,編集の辻村さんを 介して,またうれしいお便りをくださった。田中克彦さんが『複数の言語で生 きて死ぬ』(山本冴里編・くろしお出版)をご覧になり,「〔『言語の標準化 を考える』という新刊の〕執筆者の人たちすべてに読んでもらいたいような本 だ」と評価してくださったとのことで,編集者・辻村厚さんを仲介して,ご自 身の執筆担当部分の抜き刷りを,『複数の言語で生きて死ぬ』の執筆者全員に くださった。(ほ) ●田中祐輔(編著)『日本語で考えたくなる科学の問い(上)文化と社会篇』 (凡人社)  Amazon.co.jp: https://amzn.to/3LSdOs2 日本語教育も,いよいよ探究,活動型の時代に入ったという思いがする。時代 の行先をいち早く捉え,新しい活動のスタイルを獲得しようとする姿が鮮明で 頼もしい。執筆陣のネットワークも魅力的である。課題は,こうした知識,情 報が,一人ひとりの興味,関心とどのように結びつくかだろう。(ほ) ●原田大介『インクルーシブな国語科教育入門』(明治図書)  Amazon.co.jp:https://amzn.to/3vPXqBC ●八木真奈美『話す・考える・社会とつなぐためのリソース─わたしたちのス  トーリー』(ココ出版)  Amazon.co.jp:https://amzn.to/3vRXGA3 ●西口光一『メルロ=ポンティの言語論のエッセンス』福村出版  Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/mp.html ●三宅和子ほか(編)『移動とことば2』(くろしお出版)  Amazon.co.jpにジャンプ:https://amzn.to/3jClUZw ●岡本能里子ほか『越境者との共存にむけて』(村田和代編,ひつじ書房)  Amazon.co.jpにジャンプ:https://amzn.to/3xs0Jl1 ●西山教行ほか(編)『多言語化する学校と複言語教育─移民の子どもたちの  ための教育支援を考える』(明石書店)  Amazon.co.jpにジャンプ:https://amzn.to/3KMOEuw ●稲垣みどり『現象学的日本語教育の可能性─アイルランドで複言語育児を実  践する親たちの事例』(日本語教育学の新潮流31,ココ出版)  Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/ina.html 早稲田大学日本語教育研究科に提出した博士論文をもとにしたもので,哲学理 論とインタビューがつながって,とても分かりやすい展開になっている。現象 学を日本語教育に取り入れた最初の研究といってもいいかもしれない。今後の 発展が楽しみである。(ほ) ●山本冴里(編)『複数の言語で生きて死ぬ』(くろしお出版)  Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/ys.html 格調高い,気品のある本に仕上がっていて,とてもうれしいです。さまざまな ことばの境界,モノとヒトのあいだ,そして他者との共生について,若い人た ちが考えるための,上質の入門書としても評価できると思います。言語教育の 分野で,こういう本が出せるということは,まだ未来への光があるということ だろうと思って手に取りました。(ほ) ●太田美由紀『新しい時代の共生のカタチ 地域の寄り合い所 また明日』風  鳴舎  Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/at.html 女性週刊誌に「南アルプス子どもの村小中学校」の紹介記事が執筆された太田 美由紀さんの著書。南アルプスの子どもの村の学校については『対話をデザイ ンする』でもコラムで紹介させてもらったことがあり,教育問題への関心を共 有できたことがうれしい。 ●三宅和子・新井保裕(編)『モビリティとことばをめぐる挑戦 ─ 社会言語  学の新たな「移動」』ひつじ書房  Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/mo.html 三宅さんとは,「ひととことば研究会」以来の長い付き合いです。近年の移動 をめぐる諸論考に三宅さんの主張が明確に記述されています。さまざまなつな がりを感じる三宅さんの活動に改めて感謝です。(ほ) ●山内薫『「ことば」の学びに寄り添う日本語教育 ─ 「学習と人生のつなが  りの軸」の形成と意識化をめざして 』くろしお出版  Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/yo.html フランス・リール大学時代から,早稲田の助手を経て,温めつづけた複言語状 況での日本語教育,博士論文をもとに,見事に結実しています。何のためのこ とばの教育かという問いに向き合う好著です。(ほ) ●牛窪隆太『教師の主体性と日本語教育』(ココ出版)  Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/us.html 2014年に提出した博士論文をもとにした論考とのことである。2013年3月にわ たしが早期退職したため,最後まで主指導を務めることができなかったが,牛 窪さんは,旧研究室での8人目の博論提出者である。12年間の在職で8人の博 論が出たということは,ちょうど1.5年に一人博論を出していたことになる。 1995年に私が提案した「学習者主体」の概念について,教師の主体性の観点か ら,むしろ批判的にとらえる立場を明確にしたところが,この論文の主張となっ ている。ますますの議論と発展を期待したい。(ほ) ●名嶋義直(編著)『リスクコミュニケーション─排除の言説から共生の対話  へ』(明石書店)  Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/rc.html 権力が発信する「リスクコミュニケーション」の言説を取り上げ,その管理と 排除の実践を批判的に分析・考察する,刺激的な贈り物。「誰かのもっともら しい言説を鵜呑みにするのがいちばんのリスクです」(名嶋さん「終わりに」 より)とあるように,コロナとワクチンをめぐる,さまざまな言説と風評。今, わたしたちの知のあり方を問う一冊。 ●尾辻恵美,熊谷由理,佐藤慎司(編)『ともに生きるために─ウェルフェア・  リングイスティクスと生態学の視点からみることばの教育』(春風社)  Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/we.html 共生社会を考えなければならないときに,時宜を得た出版だと思う。最近のト ランス・ランゲージングの評価についてもよくまとめられていて,とても参考 になる。トランスランゲージングが,言語活動の現実であり,新しい生き方だ と語るGracia&Li weiの言説を踏まえつつ,ことばの活動が私たち一人一人の, そして社会全体のwell-beingにどうつながっていくのかを注視したい。(ほ) ●飯間浩明『日本語はこわくない』(PHP研究所)  Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/kw.html 最後の章にある「正しさはあなたが決める」のポイント「「正しい日本語」の 基準は分からず,私には指摘しようがない。自分の考えや思いを一番うまく表 せることばこそ「正しい」。」これは痛快そのものです。(ほ) ●八木真奈美,中山亜紀子,中井好男(編)『質的言語教育研究を考えよう─  リフレクシブに他者と自己を理解するために』(ひつじ書房)  Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/si.html 近年の質的教育研究の状況が手に取るようにわかる好著。もうだいぶ前の話に なるが,執筆者の一人である李暁博さんの論文「「ざわざわ」とした教室の背 後の専門的意味─ナラティブ探究から探る」(阪大日本語研究」18号,2006) を読んだ時のわたし自身の「ざわめき」は今も忘れられない。(ほ) ●吉開章『ろうと手話─やさしい日本語がひらく未来』(筑摩選書)  Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/ro.html やさしい日本語と「ろう」の関係を紐解きながら,わたしたちの言語活動のあ るべき姿を描く。帯にある「障害の正体は,無関心,無理解,思い込み」とい う衝撃的な指摘は,現在の社会状況を如実に表すものだろう。複言語状況から インクルーシブ共生社会へ,これからの社会のあり方への重要な示唆に富む好 著。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [PR] 当研究所もFACEBOOKにサイトを作りました。日々の生活や発信のリアク ションなどの詳細については,FACEBOOKをご覧ください。 http://facebook.com/gbki.org ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 誌 名:ルビュ「言語文化教育」890号 発行日:2025年1月10日 発行所:言語文化教育研究所 八ヶ岳アカデメイア     〒408−0311 山梨県北杜市白州町花水278−43     http://gbki.org/ 編集,発行責任者:細川英雄     http://gbki.org/#greet 配信システム:まぐまぐ     http://www.mag2.com/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━