[2024-10-18] Revue Langue,Culture et Education. n.885 ###################################################################### [ 週刊 ] ル ビ ュ 言 語 文 化 教 育(RLCE) ─885号─ ###################################################################### ■ 885号:もくじ ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ --◆◇研究所より◇◆-------------------------------------------------- スモールタウン構想への希望                  細川英雄 『ことばと公共性ー言語教育からことばの活動へー』(明石書店)が出ました。 --◆◇お知らせ◇◆---------------------------------------------------- 【聴取無料】Voicy「自分のことばをつくる」 ─ まもなく100回 【参加者募集:11月4日】日本語教師養成・研修推進拠点整備事業シンポジウ  ム@金沢大学+オンライン 【動画紹介】「CEFRと言語教育/日本語教育の在り方」,ほか 【記録公開】ケルン日本文化会館「共に生きるためのことばの活動とは何か」,   ほか。 【執筆しました】『日本語ジャーナル』連載「日本語教育のスタートライン」   ほか,書評募集しています。 --◆◇八ヶ岳南麓より◇◆---------------------------------------------- ●10月27日(日)テュイ&ケーリー二人展「やまやまとびせいぶつ」,ほか --◆◇寄贈図書・論文◇◆---------------------------------------------- 『辺境のラッパーたち ─ 立ち上がる「声の民族誌」』ほか ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 研究所より ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ スモールタウン構想への希望                               細川 英雄 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 私が八ヶ岳に来て33年になります。 八ヶ岳に来た経緯は、以下の本に書きました。 ・『薪ストーブのある暮らし―八ヶ岳南麓森の家から』(筑摩書房、1995年)  https://amazon.co.jp/dp/448081390X 当時、現在の北杜市は北巨摩郡の8町村で、それぞれの町と村に町議会、村議 会がありました。20年前に合併し、現在の北杜市になりました(小淵沢町は一 年遅れ)。 ここから22年間、東京に通いましたが、早期退職後の10年ほど前に、近くの大 滝湧水に太陽光パネル設置の計画があり、反対運動に参加しました。 最終的には、業者が計画を取り下げたのですが、このとき、市の窓口に何度も 相談に行きました。ところが、まったく取り合ってもらえず、結局は県の環境 課に反対の意思を伝えたのでした。初代市長の市政でした。 その後、市に太陽光パネル設置に関する検討委員会ができ、公募委員の尽力で 自然を守る条例案の設置が提案されましたが、半年以上たっても条例がつくら れないため、市庁舎前で、条例推進活動がありました。ところが、出てきたの は、検討委の結論とまったく反対の立場の業者擁護の条例が出されたため、急 速に太陽光パネルが乱立する事態を招きました。これが2代目の市長のときで す。この状況は、現在につづいています。 4年前に現市長に交代しましたが、経済利益優先の方向には、ますます拍車が かかり、さまざまな公共施設を合併縮小しようとしています。図書館しかり中 学校しかりです。一方で、巨額を投じて会員制の高級リゾートを誘致したり、 何十億円をかけて新庁舎を建設しようとするなど、矛盾に満ちたことを市民不 在のまま実行しようとしています。 しかも、10年で子どもの数を倍にするという現市長の公約は、もともと何の意 味も持たず、何をめざした市政なのかという疑問がつよくあります。 今回、来月の市長選に向けて、こうした一連の動きに歯止めをかけ、何とかそ れぞれの地域の声を一つにし、スモールタウンとしての活性化をめざそうとい う運動が生まれつつあります。 北杜市は全体で、東京23区とほぼ同じ総面積を持ち、山梨県内でも広い自然に 囲まれた地域です。さらに、各町は、2〜3区を合わせた広さがあり、一つの 町でもまとまった活動をするには広すぎるという困難があります。 それでも、たとえば、教育・福祉・医療といった生活の中枢を一カ所にまとめ、 その周辺にさまざまな町としての機能を集中させれば、地域の暮らしはずいぶ ん活性化する可能性が考えられます。 もちろん、これは一例にすぎませんが、これまでの国からの補助金を頼りにし た大型開発をやめ、小さくても充実したスモールタウンの構想は、この北杜市 をもっと元気にするだろうと思われます。そして、少なくとも、そうしたスモー ルタウンの構想を、それぞれの地域の市民が一緒に考えるような環境を市行政 が応援してくれなければ意味がありません。 私も中学統合問題等で少し発言してきました。 ・「北杜市中学校統合問題と住民自治の行方」(「学校統廃合と小中一貫教育  を考える第13回全国交流集会in東京」報告集(2024年4月1日)  連絡先学校統廃合と小中一貫教育を考える全国ネットワーク(〒195-0076東  京都町田市金井ヶ丘5丁目1-1 和光大学・山本由美研究室気付)  touhaigou.net@gmail.com 北杜市内の中学校を2校に統合するという案は、すでに10年前から市行政の中 では決定していたことなのです。 これについて2019年8月から開催された審議会では、むしろスモールタウンの 発想から小学校と中学校を一つにしてはどうかという方向性が示されたのは画 期的なことでした。 にもかかわらず、市行政及び教育委員会は、従来の統合案を強引に主張し、反 対意見を排除する形で検討委を進行させた経緯があります。 今回の北杜市長選は、こうした非民主的な現市政のあり方に強く異議を呈する ものでもあります。 国政では、裏金と統一教会の自民党がいまだに居直っています。衆議院選挙で は、徹底的な反自民の動きを盛り上げることで、未来志向の日本がようやく見 えてくるでしょう。 地域では、経済利益中心の中央集権的なあり方ではなく、地域分散型の小さな 行政を市民一人一人が後押ししないかぎり、おそらく日本もまたそれぞれの地 域の未来もないでしょう。 今、地域は本当に危機に瀕しています。 スモールタウン構想を掲げる、新しい動きに市民がどう反応するのか。 新しい動きを応援する人が意思表示しない限り、また同じことが繰り返されま す。そのためには、新しい地域の先導に期待し、一人一人の票を先導者に投ず るしか方法はないのです。 ●コロナ前の学会発表から始まり、この半年ほど具体的な準備作業を続けてき た『ことばと公共性ー言語教育からことばの活動へー』(明石書店)が出ました。  https://www.akashi.co.jp/book/b653951.html 牛窪隆太さん(東洋大)と福村真紀子さん(茨城大)との共編著ですが、ほと んどお二人に任せきりでした。380ページに及ぶ大著で、とくに後半のダイ アローグがおすすめです。こんなに自由に、かつ自律的に、それぞれが集い、 また勝手にワイワイやれる環境は、そんなにありません。 「本をつくるということはこんなに楽しい」という見本のような〈公共的〉こ とばの活動です。ぜひお手にとってご覧ください。         (ほ) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━■ ご意見・投稿お待ちしています ■━━━━━━━━━━━━━━━━ みなさまの,ご意見・ご感想をお寄せ下さい。関係の方々の著作・論文につい ても掲載します。 最近,いい書評を掲載してくれるところが減りました。本を評するということ の意味がだんだん薄れてきたように思います。 このメルマガでは,まず皆さんの仕事を紹介したいと思います。それから,自 薦・他薦による書評を掲載します。そして,その書評をめぐって,充実したや り取りがメルマガ上でできればおもしろいと考えています。 1000〜1200字程度で紹介をお願いします。論文の場合は抜き刷を,著 書の場合は1冊を贈呈いただけるとうれしいです。なお,編集部でコメント等 をつけることもあります。 みなさんの仕事を応援する場をメルマガ上に形成します。投稿いただけるかた は,言語文化教育研究所(info@gbki.org)までメールでお送りください。 【自著を語る】出版を機にご自身の本等をご紹介ください。書評のきっかけに  もなります。 【この本がおもしろい】コーナーは,新刊に限定するものではありません。古  典・名著など,知られざる書籍をそれぞれの自分のことばでご紹介ください。 【私から一言】メルマガの記事に限らず,日々の実践の中で感じたことなど,  随時お寄せください。ご相談の上,順次掲載していきます。 ●宛先: info@gbki.org 言語文化教育研究所 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ お知らせ ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ ━【聴取無料】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ Voicy「自分のことばをつくる」(#1〜#94) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ まもなく100回、「自分のことば」をつくることの意味をさまざまな角度から 検証します。 「文化は教えられるか」(#077〜079) 「○○と私」プロジェクトの醍醐味(#080〜082) 「村上春樹と私」(#083〜087) 「CEFRと私」(#088〜092) 「対話型実践の歴史と現在」(#093〜) https://voicy.jp/channel/3666/ ぜひ「いいね」やフォローをお願いします。 あわせて、ご意見、ご感想、ご質問をお待ちしています。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━【参加者募集:11月4日】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 日本語教師養成・研修推進拠点整備事業シンポジウム @金沢大学+オンライン https://jlt.w3.kanazawa-u.ac.jp/news007.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●日時:11月4日(月・振休)14時〜17時半 ●開催形態:対面(金沢大学人間社会第1講義棟)/オンライン(zoom) ●プログラムより: 「日本語教師養成・研修推進拠点への期待(仮題)」今村聡子氏(文部科学省   総合教育政策局日本語教育課長) 「外国につながる生徒の支援事例から考える包括的な教育・支援の形」芳川舞   氏(金沢大学),近藤延蓬氏(北陸大学),市嶋典子氏(金沢大学) 「福井県立足羽高等学校の多文化共生科における外国人生徒と日本人生徒との   協働的な学びを支援する学校環境づくり」岡崎普記氏(福井県立足羽高等   学校) ●申し込み:以下よりオンラインフォームから(〆切:10月30日(水))   https://jlt.w3.kanazawa-u.ac.jp/news007.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━【動画紹介】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●日本語教育学会社会啓発委員会(編)『日本語教育の参照枠とCEFR』第3回 「CEFRと言語教育/日本語教育の在り方」 https://www.nkg.or.jp/news/2023/2023_03_20-1.html 対談:細川英雄氏(言語文化教育研究所/早稲田大学名誉教授),山本冴里氏   (社会啓発委員/山口大学) 聞き手:稲垣みどり氏(社会啓発委員) 前編:https://youtu.be/cKRhZtlTH1I 後編:https://youtu.be/6xZRFhGpmSA CEFRの考え方とことばの教育のあり方をめぐって、久しぶりに山本冴里さんと の親子対談(?)です。 ●今ふりかえる,京都大学国際研究集会シンポジウム 2019年『CEFRの理念と現実』:細川英雄「複言語主義をどう解釈するか─欧州   評議会の理念と日本社会」 https://youtu.be/amGPLwhbj2w 2013年『真のグローバル人材育成を目指して─その理念と実践』:細川英雄   「どのような言語教育によるどのような異文化間能力養成が可能なのか」   https://youtu.be/nA35j3DrdNw 2009年『外国語教育の文脈化』:細川英雄「CEFRの理念と日本語教育における   文脈化の意味─学習と教育を結ぶ」 https://youtu.be/t1faSaQ-8sQ こうした経緯を振り返ると、1995年のフランス交換研究時代の記憶が走馬灯の ようによみがえってくる。CEFRの議論とはどのようなものなのか、その目的と は何か。この問いを忘れて方法ばかりに走る安易さというか愚かさこそ、欧州 評議会が最も忌諱することなのではないか。 ●少しずつ異なる観点の話なのですが,それぞれ対話とは何か,教育とは何か という視点でバイオグラフィ的に話しています。 ・荻野雅由さん(カンタベリー大学)の『転機,支え,幸せ』から  https://www.facebook.com/hideo.hosokawa2/posts/10223973117226384 ・言語文化教育研究学会:言語文化教育アーカイブズ「日本語教育とは何か─  熟練教師の語る教育哲学」 http://alce.jp/archive/jpv.html ・愛知での地域の対話型活動への応援動画(シュマン・チャンネル)です。  1.https://www.youtube.com/watch?v=_gR9qPQkT3g  2.https://www.youtube.com/watch?v=K-sza-ynFPc&t=6s ●上記の動画とも関連して,加藤早苗さん(インターカルト日本語学校)とリ チャ・オーリさん(千葉大学)が,それぞれ話題にしてくださっています。 加藤さんは,2004年に始まった「実践研究フォーラム」(日本語教育学会)の 委員会のことを,リチャさんは,雑誌「リテラシーズ」のことを語ってくださっ ています。人と人の出会いとつながり,そして対話の意味を考えさせられます。 ・「こんにちは!加藤早苗です。」well-being-細川先生-  https://www.incul.com/blog/kato/2021/02/24/19463/ ・Vol 18 オーリ リチャさん ことばの教育にかかわる人へのインタビュー企  画『転機・支え・幸せ』 https://youtu.be/01zd-pxnn_U ●「対話とおしゃべり」シュマン・デュ・ボヌール”本の庭”企画 自著のシェアタイム『自分の〈ことば〉をつくる』 https://youtu.be/FK978bOTguE 他者と共にどう生きるか。「よく生きる」ための対話の活動について話してい ます。ご意見,ご感想もお待ちしています。どうぞよろしく。 ●田中祐輔さん(青山学院大学)作成・編集の『日本語教育100年史』に掲載 していただきました。これは,戦後(1945〜2045)の日本語教育を築いた方々 の記事と映像をアーカイブ化することを目標とし,実践や論文書籍ではアプロー チできない世界,人の人生や人と人との交わりを記録したいと考えて作成され ているものです(田中氏談)。 大きな構想の下,丹念な取材を重ねた,すばらしい映像と記録です。 https://oralhistory-jle.com/archive/658/ 映像は記事の上部より再生できますが,映像単体の場合は,以下のURLとな ります。 https://youtu.be/_oFsH7FLWII ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━【記録公開】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆2018年4月28日:ケルン日本文化会館日本語教師研修会「共に生きるため のことばの活動とは」 多様な人たちが共に生きる社会において,教室という場はどのような役割を持 つのでしょうか。また,そこで私たち教師は何を実践すべきなのでしょうか。 私たちが考える「教室」「教師」「学習者」というものを振り返り,そして捉 え直す。大勢のご参加と活発な議論を感謝します。当日の記録を公開します。 ご意見,ご感想をお待ちします。(ほ) http://gbki.org/dat/koln18.pdf ◆2016年秋:ヴェネツィア「カ・フォスカリ」大学「日本語ゼロビギナーを対 象としたアクションリサーチゼロ」 日本語ゼロビギナーの学習者を対象とした全16回の活動(プロジェクトリーダー :マルチェッラ・マリオッティさん〈ヴェネツィア「カ・フォスカリ」大学〉, 市嶋典子さん〈秋田大学〉,スーパーバイザー:細川英雄)の記録と,その作 品集が公開されています(市嶋典子さんのサイト)。 http://ichishima.thyme.jp/report1.html 〈関連〉2018年9月19日ベネツィア「カ・フォスカリ大学」での講演「対話 をするために必要なもの─ワークショップゼロの理論的な背景」の動画記録 https://youtu.be/Rbhs7xUQ5YY 魂を揺さぶられた,という感想を数人の方からいただき,普段からの私の思い をそれなりに伝えることができたこと,本当にうれしく思います。私自身にとっ ても,とても刺激的なやりとりでありました。改めて御礼申し上げるとともに, 今後の議論につなげることをお約束したいと思います。       (ほ) ●上記の活動がそのまま本になりました。 https://amzn.to/39JM1Mg ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━【執筆しました:書評募集】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●『日本語ジャーナル』の「日本語教育のスタートライン」、今回で一応、一 区切りです。 ・連載:日本語教育のスタートライン  1.「ことばを教える」とはどういうことか  https://nj.alc-nihongo.jp/entry/20231120-start  2.ことばを教える教師の役割とは何か  https://nj.alc-nihongo.jp/entry/20231210-start  3. ゼロビギナーとの対話を考えることは、ことばの活動の原点  https://nj.alc-nihongo.jp/entry/20240131-start3 ・前回対談「CEFRの本質から「日本語教育の参照枠」への向き合い方を考える」  前編 https://nj.alc-nihongo.jp/entry/20230911-cefr  後編 https://nj.alc-nihongo.jp/entry/20230926-cefr ことばを教えるとは何か、ことばは教えられるのか、日本語教育以前の基本的 な問題について深江さんと対談してます。 ぜひご意見、ご感想をお寄せください。 ●細川英雄「国語から日本語へ、そしてことばの教育へ─教育バイオグラフィ の試み」(『定年後の学問の愉しみ』カンナ社編、青灯社 2023) ・Amazon.co.jpにジャンプ: https://amzn.to/3qJmonm ●『対話することばの市民 ─ CEFRの思想から言語教育の未来へ』 細川英雄 編著 3,960円 2023年4月 ココ出版 刊 ・Amazon.co.jpにジャンプ: https://amzn.to/3KEakLR 前著『「ことばの市民」になる─言語文化教育学の思想と実践』(ココ出版, 2012)からちょうど10年目にあたる年に新しい論文集を編むことになりました。 タイトルを『対話することばの市民』とし、フランスを中心とする言語教育の キーパーソンと文字通りの「対話」を試みることで、CEFRの思想から言語教育 の未来を展望しようというもくろみです。 欧州評議会による「ヨーロッパ言語共通参照枠」(CEFR)前夜ともいうべき 1995年から96年にかけてのパリ滞在経験が、20年前の『日本語教育は何をめざ すか』(明石書店,2002)を生み、それを引きつぐ形で上梓したのが10年前の 『「ことばの市民」になる』でした。 それからさらに10年、ことばと文化の統合、言語文化教育の実践研究、市民性 形成のためのことばの教育、と少しずつ視野を広げつつ、やっとたどり着いた 地点で待っていたものは、「ことばの活動は何のためにあるのか」という果て しのない問いでした。 早期退職後の10年の歩みをご覧いただければ幸いです。 読者の皆様のなかで、関係する紀要・雑誌等に書評・紹介等を書いてくださる 場合、お知らせいただければ一部お送りします。 下記までお知らせください。 info@gbki.org ●細川英雄「私はなぜ教育の道を志したか」(「教育展望」2022年11月号) http://www.chou-ken.or.jp/main/2022/11/111448-9304.html ●細川英雄「ことばの教育は何をめざすかー共生社会のためのwell-being」 稲垣みどり・細川英雄・金泰明・杉本篤史編『共生社会のためのことばの教育 ─自由・幸福・対話・市民性』明石書店  Amazon.co.jpにジャンプ https://amzn.to/3g5cVBm ●『「活動型」日本語クラスの実践─教える・教わる関係からの解放』(細川  英雄(監修),マルチェッラ・マリオッティ,市嶋典子(著),スリーエー  ネットワーク:Amazon.co.jp https://amzn.to/39JM1Mg) ●細川英雄「複数の言語で生き死にするということ─人間性の回復をめざして」 山本冴里(編)『複数の言語で生きて死ぬ』(くろしお出版)  Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/ys.html ●ALCEのメールマガジン「トガル」に「自著を語る」が掲載されました。  https://www.togaru.online/hosokawa ●細川英雄「社会的行為主体を実現するアクション・アプローチの意味─CEFR  の複言語主義解釈から言語教育実践の方向性へ」(第7章)西山教行,大木 充(編)『CEFRの理念と現実 理念編─言語政策からの考察』 ・Amazon.co.jpにジャンプ: http://gbki.org/ri.html ●細川英雄『私はいかにして表現活動主義者となったか──思考と表現の往還  から学習者主体へ』西口光一編『思考と言語の実践活動へ──日本語教育に  おける表現活動の意義と可能性』ココ出版. ●細川英雄「対話の場の形成と発展──『リテラシーズ』のバイオグラフィか  らの知見」『リテラシーズ』23巻(くろしお出版,2020年12月) ●細川英雄「自分にも相手にも「なぜ」という対話を」『民主青年新聞』2020  年4月13日号(12面) ●細川英雄「ことばの活動によるコミュニケーションとその教育の意味─欧州  評議会における言語教育政策観の推移から」『コミュニケーションとは何か  ─ポスト・コミュニカティブ・アプローチ(リテラシーズ叢書)』佐藤慎司  (編集)くろしお出版.  Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/pst.html ●細川英雄「日本社会と異文化間教育のあるべき姿」第3章  西山教行,大木充(編)『グローバル化のなかの異文化間教育』(明石書店)  2019年3月刊  Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/glb.html ●細川英雄「学習者主体からことばの市民へ─ポリティクスとしての言語文化  教育の歴史と革新」『言語文化教育研究』第15巻:特集「言語文化教育のポ  リティクス」 http://alce.jp/journal/vol15.html 畏友ピエール・マルティネーズによる「外国語の政策──新しい時代のための マニュアル」(高橋希実訳)フランス語版も掲載されています。 ●細川英雄,太田裕子(著)『キャリアデザインのための自己表現──過去・  現在・未来を結ぶバイオグラフィ』東京図書より2017年9月刊 ・Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/car.html ことばの花ひらくとき──自分のことばで自分を表現するとき,見えてくるの は自分の未来──本書は,自分の「これまで」を振り返り,「これから」を考 えるための指標になるような事例と,ことばによる自己表現の方法について, さまざまな立場に即して提案します。作文活動から,仲間どうしのインタビュー から,ライフストーリーの聞き取り,地域コミュニティ,企業研修……。 10年後,20年後の自分の人生はどのようなものだろうか──。自分の人生をデ ザインするのは,あなた自身にほかなりません。 また,テキストとして採用予定の方には,見本をお送りします(無料)。 大学・短大の文章表現クラスや日本語学校の大学院クラス・就職クラス等を担 当される方,お待ちしています。 ●(リテラシーズ叢書6)『市民性形成とことばの教育──母語・第二言語・  外国語を超えて』くろしお出版. ・細川英雄,尾辻恵美,マルチェッラ・マリオッティ(編) ・Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/lit6.html ことばの教育には,社会的行為主体として自覚的に他者とかかわる「市民」と しての意識が不可欠である。そこには,母語,第二言語,外国語という境界は ない。人がことばを使って社会の中で生きていくことの意味を追求し,具体的 な活動実践とどのように結びついているかを考える。 ●[リテラシーズ叢書5]『日本語教育学としてのライフストーリー─語りを  聞き,書くということ』 ・三代純平(編),くろしお出版,定価:3,240円 ・Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/lit5.html ●[リテラシーズ叢書4]『異文化間教育とは何か─グローバル人材育成のた  めに』 ・西山教行,細川英雄,大木充(編),くろしお出版,定価:2,592円 ・Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/lit4.html ●[増補・改訂]『研究計画書デザイン──大学院入試から修士論文完成まで』 ・細川英雄(著),東京図書.〈2015年度日本図書館協会選定図書〉 ・Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/des1.html 実践と研究をつなぐ指針として,コラムを大幅に強化。大学院受験にとどまら ず,研究計画指導に広く適応し,実践と研究を結ぶ本として増補・改訂。 増補・改訂後,早くも重版です。 ●【電子書籍版・新発売】Kindle版『初級からはじまる「活動型クラス」──  ことばの学びは学習者がつくる:『みんなの日本語』を使った教科書・活動  型クラスを例に』細川英雄,武一美(編),金龍男,坂田麗子,村上まさみ,  森元桂子(著) ・Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/ki.html ●『対話をデザインする──伝わるとはどういうことか』(細川英雄・著,ち くま新書)2019年6月5日 ・Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/tw.html ・アマゾンに興味深いコメントが出ました。まだ数は少ないですが,深く読み 込んでくださる方がいて感謝です。 https://amazon.co.jp/gp/customer-reviews/R7QMRU43DDKM5/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ─〈紹介・書評募集〉───────────────────────── 以上の書籍につき,紹介・書評を執筆してくださる方を募集します。 できれば,紹介・書評等を掲載できる紀要・雑誌・新聞等をそれぞれお探しの 上,研究所までご連絡ください。本誌1冊をお送りします。これから投稿とい うことでもかまいません。該当メディアに心あたりがないという場合には,当 メルマガでの掲載も可能です。あわせてご相談いただければ幸いです。大勢の 方に読んでいただければ,本当にうれしいです。 ご連絡は,info@gbki.orgまで。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 八ヶ岳南麓より ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ Chemin du bonheur(シュマン・デュ・ボヌール:幸福の道) https://www.facebook.com/chemindubonheurhokuto/ 秋のイベントをご案内しております。皆様、どうぞお気軽にお出かけください ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ テュイ&ケーリー二人展「やまやまとびせいぶつ」 10月27日(日)11:00〜17:00@シュマン・デュ・ボヌール 入場無料 ---------------------------------------------------------------------- オーストラリアから来た二人が日本語で書いたすばらしいエッセイの冊子もあ ります。当日入場の方々に差し上げます。 https://www.facebook.com/photo/?fbid=1075720057887120 ---------------------------------------------------------------------- 紙芝居&手話の動画の【シュマンチャンネル】配信もよろしく。 『きみにも,ぽっ』https://youtu.be/8QTReritnI0 『おじいちゃんのまきストーブ』https://youtu.be/NKSn5mFSFfs ●シュマンデュボヌールは,創造的な芸術文化のコミュニティ空間としてギャ ラリー等を開放しています。 https://chemindubonheurhokuto.weebly.com/about-chemin-du-bonheur.html お申し込みその他,お問い合わせは下記まで。 info@gbki.org ●『きみにも,ぽっ。』 絵: 本杉琉 文: 沢森りさ 発行:Chemin du Bonheur 自然と動物と人のとけあった世界の中で,ふたばは芽をふきます。それぞれの ふたばから,どんな楽しみが生まれてくるのでしょうか。本杉琉の絵と沢森り さの文が描き出す不思議な世界,きみのは,なあに?子どもからお年寄りまで, 誕生日やお祝いのプレゼントに最適。(Amazonによる紹介より) ・増補改訂版,発行しました。ご希望の方,ご連絡ください。 ●絵本『おじいちゃんのまきストーブ』 ・Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/ma.html 八ヶ岳の造形作家・本杉琉さんが初めての本格的な絵本『おじいちゃんのまき ストーブ』(絵:もとすぎりゆう,文:さわもりりさ,発行:文屋)は,今秋 刊行されました。 森に生きる日々,薪ストーブのある暮らし,世代と血縁を超えた家族のありよ う…人生の不思議さと豊かさ,美しい日常を礼賛する物語が,国籍を超えた本 杉さんの絵筆で描かれます。 この絵本制作のためのクラウド・ファンディングでは,多くの方々からご賛同 をいただき,全国の児童養護施設へ600冊を送ることができました。 https://camp-fire.jp/projects/view/161866 改めてみなさまのご協力に感謝します。 ・増刷,決まりました。益々のご支援をお願いします。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ オルタナティブスクール 八ヶ岳まあるい学校 http://yatsugatakemaaruigakkou.hatenadiary.jp ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 新たな時代を生きる子どもたちのために。山梨県北杜市小淵沢町 ●Facebookページ: http://fb.com/1631787117104481 ★言語文化教育研究所は,「オルタナティブスクール 八ヶ岳まあるい学校」 を応援しています。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ナチュラルレストラン せらひうむ http://www.oizumi.ne.jp/~oizumi/home/seraphim/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ナテュラル・レストラン,自然食,野菜料理,自家焙煎コーヒーです。博識の マスターと話していると,現実世界を忘れます。「せらひうむ」は,天使の最 上級階の名称,このお店には天使がいます。            (ほ) ●営業時間:11:00〜20:00(土・日曜のみ営業,夜は予約のみ) ●北杜市大泉町西井出8240−5523 ●電話:0551−38−0435 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 金田一春彦記念図書館(山梨県北杜市) http://www.lib.city-hokuto.ed.jp/kindaichi/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 金田一春彦記念図書館の「北杜ゆかりの著書コーナー」に,言語文化教育学関 係の本がそろっています。どうぞお手にとってご覧ください。    (ほ) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ON READING/読む時間 #001「愉しい孤独」 http://beekmagazine.com/category/column/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 八ヶ岳でmountainbookcaseという移動書店をやっている石垣純子さんが,素敵 なエッセイを書いています。 https://www.facebook.com/mountainbookcase/?pnref=about.overview 移動書店というのもユニークな活動ですが,第1回の「愉しい孤独」,なかな か味のある文章です。(ほ) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 書評募集:寄贈いただいた論文・図書など ■□■□■□■□■□■□■ ●『辺境のラッパーたち ─ 立ち上がる「声の民族誌」』(島村一平編,佐藤  剛裕ほか著,青土社、2024年4月)  http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=3935 ●『一歩進んだ日本語教育概論 ─ 実践と研究のダイアローグ』(西口光一監  修、神吉宇一,嶋津百代,森本郁代,山野上隆史,義永美央子編著、大阪大  学出版会、2024年3月)  https://www.osaka-up.or.jp/book.php?isbn=978-4-87259-801-8 ●『よい教育研究とは何か ─ 流行と正統への批判的考察』(ガート・ビース  タ著、亘理陽一・神吉宇一・川村拓也・南浦涼介訳、明石書店、2024年5月)  https://www.akashi.co.jp/book/b647624.html ●『INTEGRER L'INTELLIGENCE ARTIFICIELLE A L'UNIVERSITE』(Pierre  Martinez著,L'Harmattan,avril 2024)https://tinyurl.com/t3euhuw2 ●『日本語 巡り合い 1』(佐々木瑞枝監修、「巡り合い」編集委員会、ひ  つじ書房、2024年3月)  https://www.hituzi.co.jp/hituzibooks/ISBN978-4-8234-1216-5.htm ●村田晶子・神吉宇一(編著)『日本語学習は本当に必要かー多様な現場の葛 藤とことばの教育』明石書店.https://www.akashi.co.jp/smp/book/b641381.html ●徳井厚子著『多文化共生社会のキーパーソンーバイリンガル相談員によるコ ミュニケーション支援』ココ出版.https://cocopb.com/books/978-4-86676-073-5/ ●瀬尾匡輝・瀬尾悠希子編著『誰も教えてくれない日本語教育の現場』(ココ  出版) https://cocopb.com/books/978-4-86676-068-1/ ●名嶋義直・野呂香代子・三輪聖著『日本語×民主的シティズンシップ』(凡 人社) https://www.bonjinsha.com/goods/detail?id=14258&pt=3 ●福村真紀子『結婚移住女性のエスノグラフィー─地域日本語教育の新しい在  り方』早稲田大学エウプラクシス叢書043  https://www.waseda-up.co.jp/cat664/post-862.html ●大澤真美『生成しゆく表現としてのわたし(我他史)』(大澤真美発行),  『ことばの焚き火』(サンクチュアリ出版)  https://amazon.co.jp/dp/4801498612 ●佐藤慎司,神吉宇一,奥野由紀子,三輪聖編著『ことばの教育と平和─争い  ・隔たり・不公正を乗り越えるための理論と実践』(明石書店刊)  Amazon.co.jpにジャンプ: https://amzn.to/466HBrx 1990年代から起こった言語と社会の関係の見直しについて真正面から取り組ん だ好著。今、私たちはどのようなコミュニティや社会の未来を創造しうるのか という問いを発する本書から、ことばの教育と平和の構想をようやく展望する ことができる。『共生社会とことばの教育─自由・公覆・対話・市民性』(明 石書店2022年10月)につづく問題意識である。 ●石黒圭『コミュ力は「副詞」で決まる』(光文社新書)  おそらく殺人的な多忙の中、接続詞につづいて、今度は副詞。その精力的な  仕事に敬意を表します。  Amazon.co.jpにジャンプ: https://amzn.to/3pTfvj2 ●渡辺憲司著『江戸の岡場所─非合法〈隠売女〉の世界』(星海社・講談社)  Amazon.co.jpにジャンプ: https://amzn.to/3nMbufn ●田中祐輔編著『日本語で考えたくなる科学の問い─心と身体篇』(「調べる  ・考える・伝える」ための探究・活動型日本語教科書)  いろいろな工夫を凝らした、新しいタイプの日本語教材です。日本語を学ぶ  人だけでなく、高校生や大学生にも使えるものだと思います。「探究・活動  型」というのがうれしいですね。  Amazon.co.jpにジャンプ: https://amzn.to/3DcDRI3 ●境一三ほか著(2022)『外国語教育を変えるために』(三修社)  Amazon.co.jpにジャンプ: https://amzn.to/3H9Mgxp ●清水茂『カイエ・アンティーム=Cahier intime ─ 心の軌跡』土曜美術社  出版販売より2022年11月11日刊 ●松田真希子,中井精一,坂本光代(編)『「日系」をめぐることばと文化─  移動する人の創造性と多様性』くろしお出版より2022年10月刊  Amazon.co.jpにジャンプ: https://amzn.to/3ffRpKi ●多田孝志,他『見聞のまねび,耳見の学び─いま・未来を創る教育者へおく  る伝薪録』(三恵社)  Amazon.co.jpにジャンプ: https://amzn.to/3OBte4I ●異文化間教育学会 編著(2022)『異文化間教育事典』明石書店  Amazon.co.jpにジャンプ: https://amzn.to/39MvUxO 異文化間教育に関わる多くの術語・用語を学会員総出の執筆でまとめ上げたも の。私自身は,80年代後半に一度,この学会に入会したものの,interculture の概念を「異文化間」と訳すことに疑問を持ち始めたことで,その後退会,そ のままになっている。この訳語への疑念については,バイラム著細川監修『相 互文化的能力を育む外国語教育─グローバル時代の市民性形成をめざして』 (大修館書店,2015)に書いた。  Amazon.co.jpにジャンプ: https://amzn.to/3bpGVpv とはいえ,intercultureにかかわる,これだけの多くの概念,用語,述語を解 説するということは並大抵の仕事ではない。学会の尽力に敬意を表するととも に,今後の発展を期待したい。(ほ) ●「早稲田大学日本語教育学」32号に『自分の〈ことば〉をつくる』の書評を 古賀和恵さん(早稲田大学日本語教育研究センター)が執筆してくださった。 http://hdl.handle.net/2065/00088704 「私自身は,「自分のことば」が聴けているかという問いを突き付けられた。 それは私のことばを含め,「自分のことば」が響きあう場所が築けているかと いう問いでもある。」(p.83)とあるように,本書の問いを正面から受け止め てくださったこと,大変光栄である。かつて「教室の社会化」をめざして大学 院の研究室が総合活動型の実践を提案する中で,この概念を批判的に継承し, 教室を社会にひらくための「イベント・プロジェクト」という実践を展開した のは,他ならぬ古賀さんである。ますますの実践研究を期待したい。 ●『言語の標準化を考える─日中英独仏「対照言語史」の試み』(高田博行・  田中牧郎・堀田隆一編著 大修館書店)  田中克彦「第11章 漢文とヨーロッパ語のはざまで」  Amazon.co.jp: https://amzn.to/3PGuPYx 田中克彦さんとはずいぶん前に国語教育関係のシンポジウムでご一緒したこと を書いたが,私のことも覚えていてくださっていたようで,編集の辻村さんを 介して,またうれしいお便りをくださった。田中克彦さんが『複数の言語で生 きて死ぬ』(山本冴里編・くろしお出版)をご覧になり,「〔『言語の標準化 を考える』という新刊の〕執筆者の人たちすべてに読んでもらいたいような本 だ」と評価してくださったとのことで,編集者・辻村厚さんを仲介して,ご自 身の執筆担当部分の抜き刷りを,『複数の言語で生きて死ぬ』の執筆者全員に くださった。(ほ) ●田中祐輔(編著)『日本語で考えたくなる科学の問い(上)文化と社会篇』 (凡人社)  Amazon.co.jp: https://amzn.to/3LSdOs2 日本語教育も,いよいよ探究,活動型の時代に入ったという思いがする。時代 の行先をいち早く捉え,新しい活動のスタイルを獲得しようとする姿が鮮明で 頼もしい。執筆陣のネットワークも魅力的である。課題は,こうした知識,情 報が,一人ひとりの興味,関心とどのように結びつくかだろう。(ほ) ●原田大介『インクルーシブな国語科教育入門』(明治図書)  Amazon.co.jp:https://amzn.to/3vPXqBC ●八木真奈美『話す・考える・社会とつなぐためのリソース─わたしたちのス  トーリー』(ココ出版)  Amazon.co.jp:https://amzn.to/3vRXGA3 ●西口光一『メルロ=ポンティの言語論のエッセンス』福村出版  Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/mp.html ●三宅和子ほか(編)『移動とことば2』(くろしお出版)  Amazon.co.jpにジャンプ:https://amzn.to/3jClUZw ●岡本能里子ほか『越境者との共存にむけて』(村田和代編,ひつじ書房)  Amazon.co.jpにジャンプ:https://amzn.to/3xs0Jl1 ●西山教行ほか(編)『多言語化する学校と複言語教育─移民の子どもたちの  ための教育支援を考える』(明石書店)  Amazon.co.jpにジャンプ:https://amzn.to/3KMOEuw ●稲垣みどり『現象学的日本語教育の可能性─アイルランドで複言語育児を実  践する親たちの事例』(日本語教育学の新潮流31,ココ出版)  Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/ina.html 早稲田大学日本語教育研究科に提出した博士論文をもとにしたもので,哲学理 論とインタビューがつながって,とても分かりやすい展開になっている。現象 学を日本語教育に取り入れた最初の研究といってもいいかもしれない。今後の 発展が楽しみである。(ほ) ●山本冴里(編)『複数の言語で生きて死ぬ』(くろしお出版)  Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/ys.html 格調高い,気品のある本に仕上がっていて,とてもうれしいです。さまざまな ことばの境界,モノとヒトのあいだ,そして他者との共生について,若い人た ちが考えるための,上質の入門書としても評価できると思います。言語教育の 分野で,こういう本が出せるということは,まだ未来への光があるということ だろうと思って手に取りました。(ほ) ●太田美由紀『新しい時代の共生のカタチ 地域の寄り合い所 また明日』風  鳴舎  Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/at.html 女性週刊誌に「南アルプス子どもの村小中学校」の紹介記事が執筆された太田 美由紀さんの著書。南アルプスの子どもの村の学校については『対話をデザイ ンする』でもコラムで紹介させてもらったことがあり,教育問題への関心を共 有できたことがうれしい。 ●三宅和子・新井保裕(編)『モビリティとことばをめぐる挑戦 ─ 社会言語  学の新たな「移動」』ひつじ書房  Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/mo.html 三宅さんとは,「ひととことば研究会」以来の長い付き合いです。近年の移動 をめぐる諸論考に三宅さんの主張が明確に記述されています。さまざまなつな がりを感じる三宅さんの活動に改めて感謝です。(ほ) ●山内薫『「ことば」の学びに寄り添う日本語教育 ─ 「学習と人生のつなが  りの軸」の形成と意識化をめざして 』くろしお出版  Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/yo.html フランス・リール大学時代から,早稲田の助手を経て,温めつづけた複言語状 況での日本語教育,博士論文をもとに,見事に結実しています。何のためのこ とばの教育かという問いに向き合う好著です。(ほ) ●牛窪隆太『教師の主体性と日本語教育』(ココ出版)  Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/us.html 2014年に提出した博士論文をもとにした論考とのことである。2013年3月にわ たしが早期退職したため,最後まで主指導を務めることができなかったが,牛 窪さんは,旧研究室での8人目の博論提出者である。12年間の在職で8人の博 論が出たということは,ちょうど1.5年に一人博論を出していたことになる。 1995年に私が提案した「学習者主体」の概念について,教師の主体性の観点か ら,むしろ批判的にとらえる立場を明確にしたところが,この論文の主張となっ ている。ますますの議論と発展を期待したい。(ほ) ●名嶋義直(編著)『リスクコミュニケーション─排除の言説から共生の対話  へ』(明石書店)  Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/rc.html 権力が発信する「リスクコミュニケーション」の言説を取り上げ,その管理と 排除の実践を批判的に分析・考察する,刺激的な贈り物。「誰かのもっともら しい言説を鵜呑みにするのがいちばんのリスクです」(名嶋さん「終わりに」 より)とあるように,コロナとワクチンをめぐる,さまざまな言説と風評。今, わたしたちの知のあり方を問う一冊。 ●尾辻恵美,熊谷由理,佐藤慎司(編)『ともに生きるために─ウェルフェア・  リングイスティクスと生態学の視点からみることばの教育』(春風社)  Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/we.html 共生社会を考えなければならないときに,時宜を得た出版だと思う。最近のト ランス・ランゲージングの評価についてもよくまとめられていて,とても参考 になる。トランスランゲージングが,言語活動の現実であり,新しい生き方だ と語るGracia&Li weiの言説を踏まえつつ,ことばの活動が私たち一人一人の, そして社会全体のwell-beingにどうつながっていくのかを注視したい。(ほ) ●飯間浩明『日本語はこわくない』(PHP研究所)  Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/kw.html 最後の章にある「正しさはあなたが決める」のポイント「「正しい日本語」の 基準は分からず,私には指摘しようがない。自分の考えや思いを一番うまく表 せることばこそ「正しい」。」これは痛快そのものです。(ほ) ●八木真奈美,中山亜紀子,中井好男(編)『質的言語教育研究を考えよう─  リフレクシブに他者と自己を理解するために』(ひつじ書房)  Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/si.html 近年の質的教育研究の状況が手に取るようにわかる好著。もうだいぶ前の話に なるが,執筆者の一人である李暁博さんの論文「「ざわざわ」とした教室の背 後の専門的意味─ナラティブ探究から探る」(阪大日本語研究」18号,2006) を読んだ時のわたし自身の「ざわめき」は今も忘れられない。(ほ) ●吉開章『ろうと手話─やさしい日本語がひらく未来』(筑摩選書)  Amazon.co.jpにジャンプ:http://gbki.org/ro.html やさしい日本語と「ろう」の関係を紐解きながら,わたしたちの言語活動のあ るべき姿を描く。帯にある「障害の正体は,無関心,無理解,思い込み」とい う衝撃的な指摘は,現在の社会状況を如実に表すものだろう。複言語状況から インクルーシブ共生社会へ,これからの社会のあり方への重要な示唆に富む好 著。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [PR] 当研究所もFACEBOOKにサイトを作りました。日々の生活や発信のリアク ションなどの詳細については,FACEBOOKをご覧ください。 http://facebook.com/gbki.org ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 誌 名:ルビュ「言語文化教育」885号 発行日:2024年10月18日 発行所:言語文化教育研究所 八ヶ岳アカデメイア     〒408−0311 山梨県北杜市白州町花水278−43     http://gbki.org/ 編集,発行責任者:細川英雄     http://gbki.org/#greet 配信システム:まぐまぐ     http://www.mag2.com/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━