八ヶ岳アカデメイア――細川英雄の早稲田大学での担当クラスの記録

2012年度春学期日本語教育学オンデマンド講座(テーマ型)
「私はどのような教育実践をめざすのか」日本語教師のための国際ネット対話プロジェクト実践

報告集『対話を通して私の実践を考える』

この報告集は,2012年4月より行われた早稲田大学日本語教育学オンデマンド講座(テーマ型)において,「私はどのような教育実践をめざすのか―日本語教師のための国際ネット対話プロジェクト実践」の報告集です。

現在,言語教師の多くは,教材を一方向的に教えることへの疑問を抱きつつあります。しかしその一方で,もし教材がなかったら自分は教室で何ができるのかという不安の中にもいます。この不安は,「わたしはどのような教育実践をめざすのか」という自分自身への問いの欠如からくると考えられます。そして多くの教師は,この問いを自分以外の他者と交換する機会もなく,特に海外で日本語を教える現場では,いつの間にか孤立してしまいがちです。こうした状況を乗り越えるには,教育関係者間に「わたしはどのような教育実践をめざすのか」という問題に向き合うネットワークが築かれる必要があると考えました。

そこで,このプロジェクトでは,世界各地(国内外)の日本語教師および教師希望者を対象に,インターネットによる対話を実施し,それぞれにとっての「私はどのような教育実践をめざすのか」という問いを明確にしていくことを目的としました。

まずインターネット上に配信したプログラムに参加希望を募り,その参加者を対象に,ネット上でのやり取りを経て,それぞれのめざす教育実践についてのレポートをまとめる作業を行いました。

「わたしはどのような教育実践をめざすのか」という理念について深くやり取りし,その意味を知ることによって,自分自身の考えを自らの教育的立場としてまとめていくことが可能になります。こうして日本語教師は,与えられた教材をどのように効率的に教えるかというところから脱して,自律的に学習者と向き合うものとなるだろうと思われます。12回にわたる研究活動成果をぜひご高覧いただきたいと思います。(以上,まえがきより)